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New Education Expo 2013〜グローバル人材育成に挑む大学〜

2013.06.07

“未来の教育を考える” 教育関係者向けセミナー&展示会 New Education Expo 2013 が、6月6日から開催。
明日8日まで、東京ファッションタウンビル(江東区有明)にて開催される。
デジタル教科書、大学改革、生徒一人一台PCを含むフューチャースクールなど、近未来の教育を予測する100近くのセミナーと、出展企業100社超の展示が毎回好評の本イベントは今年で18回目。
主催のNew Education Expo実行委員会によると、事前申し込みが前年比130%とのこと。
セミナーの一部は、札幌、帯広、名古屋、福岡のサテライト会場でも参加できる。
また、大阪でも6月21日(土)、22日(日)に開催の予定。

今回は、セミナー「グローバル人材育成のための様々な取り組み」の様子を紹介する。
横浜国立大学 国際戦略推進機構 教授 国際戦略コーディネーター 鈴木雅久氏、
昭和女子大学 国際交流センター次長 山崎真伸氏、
明治大学 国際総合研究所 特命教授、明治大学 文明とマネジメント研修所 事務局長 高木直二氏のお三方から、大学内の実践についてうかがった。

●グローバル人材育成教育と国際プログラム教育の諸課題
〜日留協働グループワークと国際学生スタッフ導入の薦め〜
横浜国立大学国際戦略推進機構 教授 国際戦略コーディネーター 鈴木雅久先生

横浜国立大学では、今年度より、英語による学士課程兼グローバル副専攻として、グローバル・ファシリテーター養成コースを設置し、YCCS(Yokohama Creative-city Studies) Program Taught English というプログラムを実施している。
日本人学生と留学生がともに、教材設計実習と、実務指導実習を学び、日留協働のグループワークによって、学んだ内容を教材にし、他の学生たちに実際に教えるというもの。
留学生の募集に当たっては、小論文審査と、全国初のビデオ審査を行った。
ビデオ審査では、個人の特徴、特技、10年後、30年後の目標、YCCSへの志望動機などを聞いた。
そのビデオを実際に見せてもらったが、高校卒業時点の学生によるプレゼンテーションとは思えないほど、みな流暢な英語で、しかも堂々と発表している。
同年代の日本人がこれだけの英語力、表現力を発揮できるだろうかと不安になるほどだ。
「日本人学生は、将来、彼らのような人たちと競争することになる。このままでは到底戦えない」と鈴木教授。
そもそもなぜ、いつから日本は世界で勝てなくなったのか。
ガラケーという言葉に象徴されるように、日本の携帯電話、白物家電などは全く世界で売られていない。
一方、自動車や自動車部品、映像機器、第二次産業用加工材料(鉄鋼、プラスチック、有機化合物など)は世界で売られている。
「日本がなぜ世界で負けているのか。もの作りや技術力ではなく、世界で日本のよいものを紹介し売っていくためのロビー活動、つまり、コミュニケーション力が足りないのです。グローバル人材育成とは、ただ英語ができればいいのではなく、世界を引きつける魅力を持ち、それを伝えられる人材の育成なのです」
このプログラムはすべて英語で行ない、英語力を向上するのはもちろん、協働コミュニケーション能力、達成意欲・責任感、準備力(情報収集力、分析力、企画力)、協調性リーダーシップなどの能力向上を目指す。
「留学生はみな明るく積極的。日本人学生も、協働作業を通して留学生から影響を受け、変わっていくことを期待しています」

●グローバル人材育成のための昭和女子大学の取り組み
昭和女子大学 国際交流センター次長 山崎真伸氏

創立93周年を迎えた同大学では、古くから国際交流活動を行っている。
1988年に、昭和ボストン校を開校。
英語コミュニケーション学科と国際学科の学生を中心に、長期短期合わせて学部生約5000人余のうち約1割は毎年留学をしている。
「本学に関しては、世間で言われるような内向き指向は感じられない。留学を希望する学生の相談窓口として国際交流センターを開設したが、積極的に留学したいという学生の相談が増えていると感じる」と山崎次長。
今年度、文部科学省の進めるグローバル人材育成事業に採択され、全学的な英語科目の再編成、学部共通プログラムとしてのボストン留学、その後の海外大学への留学奨励を進めている。
グローバル人材の必要性が、近年叫ばれているが、その要因は、産業界のニーズ、学生の世界的な流動、少子化に加え、貧困や紛争、世界的な環境問題など、一国だけでは解決できない課題が増えていることがある。
これらの問題を解決していくにはグローバルマインドを持つ人材の育成が急務だ。
では、昭和女子大学では、どのようなグローバル人材増を目指すのか。
「20年後の日本をイメージすると、自分は日本で生活していても海外から流入する人が増え、日本国内の環境がグローバル化しているのではないか。本学では、グローバルに活躍するトップリーダーを育てるというよりは、だれもがグローバル化を求められる時代に必要な知識や能力を身につけることを目指している。昭和女子大が考えるグローバル人材は、Connect(様々に異なる人、価値、文化、物を結びつける力)、Collaborate(グローバルな環境で文化的背景が異なる他者と協働・協調する力)、Create(新しい価値や文化を想像する力)=3Cと、Glocal(身の回りの減少を地球規模の動きと関連付けて考え行動する力)=1G、3C1Gを持ち、社会の様々な分野で活躍する女性職業人です」
本学では、学生を海外に送りだすことは進んでいるが、留学生の受け入れはまだまだこれから。
また、一番ハードルが高いのが大学の国際化だという。
「留学生の受け入れに必要な諸手続き、文書の英語化など、職員がまずグローバル人材にならなければならない。また、外国人留学生に選ばれる大学となるための魅力づけも課題ですね」

●コミュニケーション重視の外国語学習を大学教育に導入するために
〜明治大学 国際総合研究所 特命教授 明治大学 文明とマネジメント研修所 事務局長 高木直二氏

高木教授は、早稲田大学で2004年以来、英語教育のコミュニケーション能力向上のための英語教育に取り組み、「早稲田メソッド」を開発。導入を推進してきた。
「導入のきっかけの一つが学生のニーズ。大学への要望をきいた学生アンケートによると、『コミュニケーションできる英語力が身につく授業をしてほしい』が毎年ベスト1。これに答えるべく、企業等の支援を受け実証実験を経て導入したのが、早稲田メソッドです」と高木教授。
メソッドの基本は3ステップ方式。
【ステップ1】チュートリアル・イングリッシュ=講師1対生徒4人の超少人数によるコミュニケーション向上プログラム
【ステップ2】CCDL(Cross Cultural Distance Learning)=ビデオ会議システムやチャットを利用して、海外大学と協同で行なう異文化交流授業
【ステップ3】サイバーゼミ、サイバーレクチャー=ビデオ会議システムを利用して、海外大学と専門科目を協同で学ぶ授業

2004年から2010年で、ステップ1は、述べ約63,000人、CCDLは述べ約40,000万人が受講し、大学内でも定着してきた。
「キャンパス内で、留学生と英語で会話をする学生の姿を見ることも多く、一応の成果が出ているのではと思っています」。
高木教授はその後、明治大学に異動し、同大学にも早稲メソッドを導入。
同時に実証実験としてカランメソッドを導入した。
カランメソッドは、英国の大手語学学校がヨーロッパの非英語圏で実践していて、50年の実績がある。
スカイプを使用して、オンラインでフィリピンのチューターと1対1で学習を進める。
オンライン授業とすることで、特別に場所を用意する必要がなく、スカイプやフィリピンのチューターを採用することで、受講料を低く抑えることができたという。
また、実証実験の被験者20名の募集を募ったが、160名の応募があり、英語教育へのニーズは明治大学でも高いことがわかったそうだ。
成果としては、20名の学習者のTOEICスコアは、平均110点アップ。
心配していた、フィリピン人チューターの発音も、不満は一人もなかった。
また実証実験中、一人の脱落者もなかった。
学生からは、「カランメソッドは、最初は先生の英語が早くて聞き取れないし、質問に答えたくても言葉が出てこなかった。でも、今では慣れて、言葉が出るようになった。英語でものを考えられるようになった」と好評。
「現在、TOEFL等の試験を大学入試に導入するとの政府の提言に注目が集まっているが、似たような論争は40年前からあった。いずれにせよ、現在の時代背景を考えると、英語教育は変わらざるを得ない。しかしそのためには大学英語教員自体が、海外大学との協同ゼミを行うなど、英語でのコミュニケーションをすることが必要。また、英語教育の改革を全学的なプロジェクトとして取り組むためには、英語教員が、プロジェクトマネジメン力をつける必要がある。さらに、それを英語教員だけにまかせるのではなく、複数の大学が協同で、支援する仕組みも必要です」

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