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第1回先生のための学習コーチング入門

2011.06.06

コーチングの第一歩は生徒との信頼関係作りから

ビジネス界では一般的になりつつある「コーチング」。
部下がやる気モードになって自ら行動するようになった、とその評価は高い。
学校現場でも効果はあるのだろうか?
答えはYes。それはなぜ?どのように取り入れればいいの?
そんな疑問にわかりやすくお答します!

「教える」ことと「育む」ことのバランスで、本当の「教育」を

「俺、英語苦手なんだよね......」
「じゃあ、君の好きなサッカーで使われる用語(ドリブル、フェイント他)の本来の意味を調べて先生に教えてくれないか?」
「あ、はい......」

私が勤務する学校で交わされる会話の一部です。英語の苦手な生徒も、自分の好きなサッカーに関わることであれば、英語に対する苦手意識が和らぎ、辞書を片手に調べだす。

モノが余り、なんでも簡単に手に入るようになった今、「英語を勉強するのは、君の将来のためだ」などという、大人たちの言い分だけで子どもたちの学習意欲を引き出すことが難しくなりました。学習コーチングとは、この、意欲を「育む」ための技術を体系化したもので、これらを学ぶことにより、「教える」ことと「育む」ことのバランスを考えることができ、子どもたちに対し、本当の「教育」ができるようになるものと考えます。ここでは、生徒たちのやる気を「育む」学習コーチングについて、解説してゆきます。

すべては、「信頼関係」から始まる

「教える」にせよ「育む」にせよ、まずは目の前に生徒がいなければ何事も始まりません。学校という空間では、教員が生徒より上の立場であるため、教員であるあなたが一言「来い」と言えば、生徒は指示に従い、目の前にやってくるでしょう。しかし、目の前の生徒に話しかけることはできても、彼らがあなたを信頼していなければ、メッセージは伝わりません。キャッチボールにたとえると、あなたの投げたボールを生徒は取るフリをしているだけで、実際にはそのボールは生徒の手からこぼれ床に転がっているのです。このような状況では、「育む」ことはおろか、「教える」ことさえ不可能です。まずは、信頼関係作り、つまり、キャッチボールができる環境を整える必要があります。

ではどうすれば生徒とキャッチボールができるのでしょうか。それはまず、あなた自身が生徒の投げたボールを受け止めてあげればいいのです。学校の問題児も、養護教諭の言うことなら従うことがよくあります。これは、養護教諭が「受容と共感」の訓練を受けており、生徒の言葉を受け止めることができるからです。よく「いいコミュニケーターは、口が達者な人」という誤解がありますが、そうではなく、「聞き上手な人」を言うのです。あなたが聞いてあげれば、相手も聞いてくれます。あなたが聞かなければ、相手も聞きません。

正しいことを伝えるだけが教育ではない

私自身、かつて家庭の悩みを抱え、学習がおろそかになっていた生徒に対し、学習することの大切さを「伝える」ことを優先したため、生徒の不信感を買ってしまい、音信不通になったことがありました。時間がなかったので、ついつい「指導」モードになってしまったのです。そこで学習コーチングの基本に立ち返り、次のような受容と共感のメッセージを留守録に残しました。「この前は勉強のことばかり話してしまい、君が抱えているものを十分に聞けなくてごめん。とりあえず、勉強のことは横において、君の思いを聞かせてくれないか」。メッセージを3回残した時点で、彼から再び電話がかかってきました。その後、生徒の話をじっくりと聞くことで、私の知らなかった情報がたくさん出てきて、自分の無知を恥じました。

当初私が学習の大切さを伝えたこと自体は、教育者として決して間違っていたとは思いません。問題は、そのタイミングです。私は彼のボールを受け取る前に、自分のボールを受け取らせようとしたのです。正しいことを伝えることだけが教育ではないのだと感じました。

学習コーチングはこの信頼関係があってはじめて機能します。次回からは、この信頼関係ができている前提で、彼らのやる気を引き出す具体的なスキルについて解説します。

信頼関係チェックリスト

佐々木宏さん

佐々木宏さん
学習コーチアカデミー主席研究員
美川特区アットマーク国際高等学校コーチング・ディレクター
教育に特化したコーチングである、「学習コーチング」の提唱者。
教員や保護者への研修、生徒への進路講演をはじめ、学習コーチングの研究

学習コーチング研修の紹介
学習コーチアカデミーでは、教育現場に特化した学習コーチングの研修を毎月開催しております。コースには、入門から上級コースまで、受講者のニーズに合わせたプログラムをご用意しております。また、学校や研究会へお邪魔する訪問研修も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください(お問い合わせ時に『キンジロー』を見たとお伝えいただくとスムーズです)。
HP:http://www.coaching-academy.jp/

[Vol.2 2009春号掲載]

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