編集長ノート

田中真紀子文部科学大臣が、2013年度から新設を予定していた3大学の設置について「不認可」とした問題があった。
田中大臣が「大学が多すぎる」という問題に対して一石を投じたことについては大いに賞賛したい。
たしかに、田中大臣のやり方は突然すぎて良くなかった。あのやり方ではダメだ。

日本には現在778校(国立86 公立95 私立597)の大学があると言われている。
OECD(経済協力開発機構)の発表によると、2011年度の日本の大学・短大への進学率は57.6%。放送大学と専修学校への進学者も合わせると、81.1%の進学率となっている。
ほとんどの日本人が高等教育を受けているということになる。

進学率の上昇とともに大学が増え、生徒の取り合いをしているのが現在の日本の大学の姿だ。
学生の為の教育ではなく、学校経営のための教育になっているため、教育の質が下がっているのは容易に想像がつく。

ここで考えなければいけないのは「教育には多額の税金が使われている」ということだ。
多額の税金を使って学校を作って運営しても、その投資額に見合ったリターンが得られているのだろうか?

ここで就職率の数字をみてみよう。
官庁の統計で発表されている就職率には63.9%というものと93.6%という2つの数字がある。
前者の63.9%は文部科学省の調査で、「卒業者数÷内定者」の数で表されている。
それに対し、93.6%という数字は文科省と厚生労働省が共同で行っている大卒者の内定・就職状況に関する調査で、「就職希望者数÷内定者」の数字だ。
前者の「卒業者」の中には大学院に進学する人たちなども含まれる為、一概に就職率が低いとは判断できないので気を付けて数字をみなければいけない。
そう考えると確かに大学を卒業すると就職率はそんなに悪くなさそうだ。
「大学を卒業すれば就職できる確率が高いからやっぱり大学へ行くべきだ!」と考える人が多くいてもおかしくない。

もう一つ見なければいけない数字として離職率がある。
新卒大学生の3年以内の離職率が4割に達しているということ。高卒の新卒社員の離職率はさらに高いといわれている。
また、厚生労働省の発表によると、ニート状態の若者は60万人にも達しているという事実がある。

先ほどの投資に対するリターンの話に戻ると、税金を投入して高等教育を受けて育成された人材の多くが「働いて税金を納める」という社会への還元活動を行っていないのだ。

大学に合格することが目的になってしまって、大学で何を学ぶのか?その後の仕事にどうつなげていくのか?という視点が学校側にも生徒側にも欠けていることも大きい。
企業にしても「適材適所」と言っている割には、なぜ専門性の高い人材よりも、大学名や学歴で採用をしているところがまだ多いのか?
受験勉強ができる人材があふれて成功する時代ではない。

人口も経済も縮小傾向にある日本では、様々なことを効率化していく必要がある。
税金の無駄使いはまっさきに改善されるべきことなのは明白だ。

現在、国が学校側に対して税金を投入しているから純粋な競争が大学間で生まれていない。
例えば学生一人一人に教育助成金を払うような形をとれば、学生に人気のある大学ほど生徒が増え、もっと自然競争の中で大学が淘汰されていくはずだ。

過疎化の進んでいる地域では、地域活性の為に学校を誘致し、学生を呼び込みたいという思惑もあるだろう。
しかし目先をみるのではなく、大学設置基準も含めた日本の教育の方向性を、産官学で議論しきちんと示していくべきだ。

編集長プロフィール

天野智之

天野智之

15歳で単身ニュージーランドの高校へ留学。高校卒業後に渡米、カリフォルニア州立大学で学位を取得。その後日本へ帰国し、会社員を経て起業。
「海外から見た日本の教育」という視点で日本の教育制度にもの申す!

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