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起業家という異色の経歴を持つ官僚、文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト プロジェクトディレクターの船橋力氏。ダボス会議のヤング・グローバル・リーダーにも選出された経歴を持つ氏に今回のプロジェクトについて話を伺った。

2020年までに留学生を倍増!

天野:日本以外の国ではドンドン海外に出る人材が増える中、留学を盛り上げようという動きは今までにも多々ありましたが。しかし実際には、日本人の海外留学生数は減少の一途を辿っていますね。

船橋:2004年から2010年までの6年で30%も減少しています。そんな中で海外拠点を持つ企業のほとんどがグローバル化を推進する国内人材の確保・育成に大きな課題を抱えています。
しかし世界を見てみると、1975年に全世界で約80万人の留学生がいたのに対して、36年後の2011年には430万人と5倍以上の増加がみられます。

天野:日本人留学生の倍増とは具体的な数字だとどれくらいの目標を持っていますか?

船橋:2010年時点で大学生等の留学生は約6万人、高校生は約3万人いました。2020年には大学生等を12万人、高校生は6万人まで増やしたいという目標を掲げています。

天野:今まで減少傾向にあった留学生数を倍に増やすのは容易ではないでしょう。

船橋:留学生数の減少には様々な理由があります。留学を妨げている理由として以下5つの課題があると考えています。
1.経済的理由
2.学校の体制
3.動機づけ
4.企業・就職先の評価
5.民間資産(知見等)の活用
です。
経済的理由には奨学金を出し、学校体制に対しては、高校・大学の国際化推進をしていくなど、それぞれの課題に取り組んでいきます。
また、政府の力だけでは難しい為、民間の力も借りて、官民協力でこの目標を達成していこうというのが今回のプロジェクトの新しい取り組みです。

天野:官民協働でプロジェクトを行うことのメリットとは?

船橋:持続可能な仕組みを作ることです。最終的にはプログラム構築や資金調達等が自律的に行われ、企業ごとに自分たちに合った人材育成ができることが理想です。

質の高い経験に対して企業は好意的

天野:短期留学や、休学をしての留学は就職に不利じゃないかと心配する学生も多くいると思います。

船橋:企業は「質の高い経験」であれば好意的に捉えてくれます。休学していることが不利になるのではなく、休学中に何をしたかが重要なのです。

天野:私自身アメリカの大学を卒業し、ボストンキャリアフォーラムというアメリカのボストンで開催される最大級のバイリンガル就職イベントで日本企業に就職しました。
私は2003年にキャリアフォーラムに参加しました。当時70社くらいが留学生をリクルートする為にボストンに集まっていましたが、今では200社弱の企業が参加すると聞いています。つまりここ10年の間に3倍近い企業が留学生採用を積極的に行っているという現状があるのに、いまだに留学は就職に不利だというイメージが根強くありますね。

船橋:私達は企業による留学経験者採用宣言や保護者の意識づけなども含めて新しい留学文化の創出ということも考えています。
今回のプロジェクトではすべての若者に多様な留学や世界最高水準の教育機会を与え、新しい挑戦ができる若者を創出していきます。
企業にとってもそのような若者が活躍することはグローバルな競争で戦う上での強みになります。

地球は一つの村となる

船橋:IT技術の発達により、ボーダーレスな社会が広がっています。今後は自分のまわりだけの問題や日本だけの問題ではなく、地球人として地球全体を見る広い視野で物事を捉える必要になります。

天野:グローバル人材に対して様々な定義があると思いますが、船橋さんご自身はどうお考えですか?

船橋:私はグローバル人材とは以下の3点だと考えています。
1.”Think Global, Act Local”(地球規模で物事を考えつつ、目の前のことに向き合ってアクションがとれる人)
2.”Respect & Accept(他人を尊び、自己肯定ができる人)
3.自分の軸を持ち、外に発信できる人
よく、「アメリカで活躍しているグローバル人材」とか「中国で活躍しているグローバル人材」という風に、どこか1か所で活躍している人をグローバル人材と言うのを耳にします。
特定のエリアで活躍するのではなく、もっと地球規模で活躍できる人材を育てたいと思っています。
海外では「グローバル人材」という言葉自体が無いですからね。

天野:確かに私自身アメリカで長く住んだ経験があっても、他の国や他の文化の事を知っているわけではないので、地球規模で考えるというのは難しいですね。

船橋:私は人生は生涯、学習だと思っています。常に学びは深まり、終わりが無いものなのです。例えば3ヵ国に住んだ経験がある人でも、4ヵ国、5ヵ国と増やしていくことができる。終わりのない学びだからこそ、自分自身の軸を持って、学び続けることです。

船橋力

船橋力さん
文部科学省?官民協働海外留学創出プロジェクト プロジェクトディレクター。
上智大学卒業後、伊藤忠商事株式会社入社し、ODAプロジェクトを手がける。2000年、株式会社ウィル・シード設立、代表取締役社長に就任し、企業と学校向けの体験型・参加型の教育プログラムを提供。2014年、同社顧問。2009年、世界経済フォーラムのYoung Global Leaderに選出される。一般財団法人教育支援グローバル基金Beyond Tomorrow発起人代表、NPO法人TABLE FOR TWO International理事。

編集後記

アイドルグループも留学促進に協力するなど、様々な注目を集めるトビタテ!留学JAPANが遂に本格的に始動する。
今までも政府は留学促進を行ってきたが、今回のような大規模な動き、しかも官民が協力して継続的に留学の促進&支援を行っていくというのは今までに例を見ないのではないだろうか。
船橋さん自身が起業家として成功した方で、文部科学省のプロジェクトのリーダーになるには異色の経歴の持ち主だ。
私自身が留学促進事業を行っている身として、このプロジェクトは応援していきたい。
2020年に向けての残り6年は、グローバルな社会で存在感が薄れてしまっている日本が存在感を取り戻す最後のチャンスかもしれないと私は思っている。
日本はこの6年の間に変わらなければいけないのだ。

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