【インタビュー】
大阪から教育を変える!最年少!民間人校長の挑戦(後編)
2012.02.22

昨年9月に、大阪維新の会が「教育改革条例案(以下条例案)」を提出し、物議をかもした。
11月27日には大阪府知事・市長ダブル選で大阪維新の会が圧勝。ますます大阪から目が離せない。
大阪府立和泉高校で最年少の民間人校長となり、一昨年4月から教育改革に取り組んできた、中原徹校長先生にこれからの教育についてお聞きした。
ヘンなことをした奴ほどほめてあげる
天野:中原先生は、アメリカで弁護士として活躍されていたのに、日本に帰ってきて府立高校の校長になろうと思ったのはなぜですか?
中原:アメリカにはスゴイ人がいっぱいいるのだろうと思って行ったのですが、案外そうでもない。
日本人の方が思考力があるのに、意見を伝えられないからすごくナメられている。
アメリカでいろいろな学生にもビジネスマンにも会いましたが、政治を見ても外交を見ても、アメリカの高官にガツンと言われても押し返すことができる人は滅多にいない。
一体いつまでナメられたままでいるのかと。生意気なことを言うようですが、単純な言い方をすればムカついたからですね(笑)。
しかし、大学生や社会人になるとなかなか変われない。
妙なプライドやコンプレックスが邪魔して、新しいことに挑戦して失敗することを恐れてしまう。
そこで、まだ若く、でも僕の言っていることも理解できる年齢に至っている高校生を相手にメッセージを伝えたかったのです。
それで高校の校長へ。
天野:和泉高校では、トロピカルデーというのがあるそうですね。
どのようなものですか?
中原:水着とヘソ出しは禁止、それ以外ならどんな頭髪、服装、アクセサリーで登校してもいい、という日を一日だけ設定しています。
ただし、なぜそれがトロピカルなのかと聞かれたら説明できること。
ルールはそれだけです。
「よくそんな格好で電車に乗れたな」というような生徒もいますよ(笑)。
教員には、「この日だけは、ヘンな格好をした奴ほど褒めてやってください」と言っています。
近隣の人からは、「110年もの伝統のある学校なのに落ちたな」との批判もあります。
でも、そういうふうに既成概念の中に閉じ込めるから、外国人と発想の勝負になったときに負けてしまう。
メリハリをつければそんな日があってもいいと思います。
日本人って滅茶苦茶アホなこと考えるなあ、でもビシっとすべきときは時間にも遅れずに凛としている、そんな人ってカッコイイじゃないですか。

答えのないことを考えさせる
天野:論理的思考力や表現力を磨く授業について、詳しく教えてください。
中原:総合的な学習の時間を使ってやっています。
現在は1年生のみですが、来年から選抜でグローバルコース(いわゆる特進コース)を設け、その生徒には1年生から2年間、論理的思考力・表現力強化に特化した授業を用意します。
日本人は、考えていることはすばらしいし、思いやりも気配りもある。
最大の問題点は、アウトプットができない。
「説得」ができないことです。
日本人は、企業に入って営業職にでも就かない限り、人を説得するという機会がない。
国語の授業でも、わかりにくい評論文ばかり読まされているから、論理的に、シンプルに言いたいことを整理することができない。
それで結論は何なの?と言われて答えられない人が非常に多い。
論点は何か、結論は?理由は?反論は?それに対する反論は?再反論は?
ディベートでも小論文でもプレゼンでも、そういうブロックごとのフローチャートが頭の中に描けなければできません。
それを、総合の時間でやっています。
その上で、プレゼンや議論の時間を設けています。
天野:先生方の反応はいかがですか?
中原:若い先生は、面白いと言っています。
新しい内容で教えるのが不安だという先生には、生徒と一緒に悩んだらいいじゃないかと言っています。
あえて正解はどっちでもないという問題をぶつけて、生徒と一緒に考えたらいいじゃないかと。
生徒たちは、先生から出された問いにはどうせ用意された正解があり、早くその正解を聞いて暗記するのが勉強だと思ってしまってます。
これからはできるだけ正解のないことを考えさせることが大事です。
だって、社会に出たら毎日「正解がない」問題との闘いですからね。
僕は毎年、「平和と国防を考える」という希望者対象の特別講座を行っています。
僕が作った長崎の原爆被爆者の方へのインタビュー映像を生徒に見てもらい、憲法9条に関する僕の講義を聞いてもらいつつ、生徒は自衛隊の駐屯地に体験入隊します。
つまり、平和と国防という総理大臣だって両立させるのに苦慮しているテーマに関する情報を隠さずに生徒に提供し、大いに考え、議論してもらいたいと思っています。
これまで教育界でタブーとされてきた情報にもバランスよく接してもらい、バランスの取れた判断をして欲しい。
その上で出された結論は何でもよい。
自衛隊は違憲、自衛軍にすべき、色々な意見があって然るべきです。
大事なことは自分で責任を持って考え、判断することです。
天野:そういう授業は、アメリカでは当たり前にやられていることですが、日本の学校ではほとんどありませんね。だから、ハーバード大学のサンデル教授の授業が大変な話題になった。
中原:あのくらいできるよ、と言える先生が増えてほしいと思いますね。そういう力を持った先生は日本にたくさんいますので!
(2011年12月26日取材)

- 中原徹さん
- 大阪府立和泉高校校長。神奈川県横浜市出身。早稲田大学法学部卒。1994年に司法試験合格後、東京の法律事務所勤務を経て、米国ミシガン大学ロースクールへ。2000〜2009年、米国ロサンゼルスの法律事務所に勤務。共同経営者に。2009年に帰国し、2010年4月に、大阪府立和泉高等学校第27代校長に就任。全国最年少校長と報道される。
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