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受験勉強はムダではない!受験英語でも使える英語を身に付ける

TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)とは、英語を母国語としない人たち向けの英語教授法のこと。
日本でも質の高い英語教師へのニーズが高まり、最近TESOLが注目されています。
キンジローでは、TESOLを履修した現職の英語教師の方に、履修のきっかけや履修後の変化などをお聞きしました。

シリーズ第2回目にご登場いただくのは、相模女子大学高等部の英語教師、松本浩欣先生です。

受験勉強はムダではない!受験勉強を通じて使える英語を身に付ける

天野:英語教師を目指されたきっかけは何でしょうか?

松本:私の父親が教師だったため、小さいころから自然と教師になるものだと思っていました。
小学校一年生の頃の文集にも将来の夢に「学校の先生になる」と書いていたくらいです。
ただ、英語の先生になろうと思っていたわけではなく、国語か社会の先生をイメージしていました。
実は英語は大変苦手だったので、入試で追い詰められて猛勉強しました。
その後、大学2年次にイギリスに短期留学をした際、特に英語に苦労しなかったことで、受験勉強が役に立つと実感したことが一つのキッカケかもしれません。

天野:よく受験英語は実社会で役に立たないということを聞きますが、勉強方法などに何か違いがあったのでしょうか?

松本:自分の勉強方法が特殊だったかどうかはわかりませんが、リーディングを中心とした勉強をしました。
とにかく色々な英文を読む「多読」で英語を学びました。
音読もたくさんしましたね。
よく「受験英語」対「実用英語」のような言い方がされますが、経験上しっかりやれば、受験で勉強した英語は実社会でも十分通用すると思います。

オンラインのTESOLコースで日本にいながら履修

天野:現在、オーストラリアのメルボルン大学のオンラインコースでTESOLを履修中とのことですが、TESOLを履修しようと思ったキッカケは何でしょうか?

松本:授業の高度化の為です。
よく、そもそも学校教育は間違いだらけで、それをどう正常化するかという議論を耳にしますが、そういう文脈ではありません。
ただ、授業をより良くするために教師も学び続ける必要があると私は考えています。
私は教職に就いてから、教壇に立つ傍ら日本の大学院に通い、比較文化の修士を取得しました。
その後さらに別の大学院で教育学の修士を取得した後、現在博士課程に在籍中なのですが、自分の仕事の高度化という意味で英語教育と真摯に向き合うためにもTESOLを学ぼうと思い、日本にいながらオーストラリアの大学のTESOLを履修できるオンラインプログラムに出願しました。

天野:オンラインということは実際に先生やクラスメイトと顔を合わせて授業に参加できないと思いますが、具体的にどのようなことを学べるのでしょうか?

松本:ディスカッションやペーパーワークが中心となります。
オンラインでも現地の授業と連動していて、現地で授業に参加している人たちもオンラインでの課題やディスカッションに参加できるようになっています。
ディスカッションでは、いくつかのテーマを示され、1週間という期間内でお互いに意見やコメントを投稿していき、〆切りまでオンラインで議論をしていきます。かなり大変ですよ。

天野:オンラインでもグループワークなどを行うということでしょうか?

松本:はい。
メールなどで連絡を取り合いながらグループワークを行い、成果物も提出します。
世界中にクラスメイトがいるので、グループワークの時に、ヨーロッパは今何時くらいだからいつ連絡しようとか、サマータイムの時期など、相手との時差も気にしながら進めなければいけないので大変ですが、凄くやりがいがあります。
スカイプを通じて意見交換をすることもありますよ。
たまに、課題がきついなどと愚痴も言い合っていますし。
また、韓国や中国、ギリシャなどで英語を教えている先生もおり、そういう人たちから現地の英語教育の実情を聞けたりするので、とにかく学べることが多いです。

天野:日本と海外の英語教育で大きな違いはありますか?

松本:教師の立場で言うと、「第二言語習得」という考えが日本では弱いように思います。
日本の英語教育はどちらかというと、受験やTOEIC(R)などを含めたテスト対策の為のものになりがちです。
もちろんテストの点数は結果が見えやすいですが「何のために英語を学ぶのか?」と考えると、本来はテスト対策だけではなく、使うためですよね。
英語をコミュニケーションツールとして使えるようにするのも英語教育の役割であるはずなので、第二言語習得という視点でも授業を捉えるべきだと思います。
また学生の立場で言えば、英語教育に限らず、海外の教育のほうがシビアで結果が求められる様に感じます。
自分が何をどう考えて、なぜこの答えを導き出したのかということが評価されます。
日本では頑張っている、頑張ったということが評価の対象になりますが、海外では頑張るのは当たり前で、その結果何が出来るようになったのかという、具体的な成果が求められると感じますね。

教育の「質」を問う

天野:TESOLで学ばれていることなどは実際の教育現場でも役にたっていますか?

松本:役にたっています。
先ほども言いましたが、より良い授業をするために教師自身が学び続けることが大事だと思います。
より質の高い授業を受けた生徒から「もっと頑張ろう」とか「この授業に付いて行きたい」「この先生からもっと教わりたい」と思われるように、さらに知的好奇心を刺激できるようになりたいと思っています。

天野:具体的に導入している指導法にはどのようなものがありますか?

松本:例えば、音声ファイルを波形にして分析できるソフトがありますが、それを使うと、母音一つとっても、普段日本語を話している私たちにはどのような発音の傾向があるかがわかります。
それを生徒に説明すると納得しやすいようで、音読の時など、普段使わない音を出そうと口の形や舌の位置などを工夫して、生徒たちも楽しみながら学んでいます。
TESOLのコースでも波形の特徴や傾向をもとに何語の母語話者かを話し合い、それを踏まえてどのように英語の発音指導をすべきか考えます。
もちろん「唯一正しい」発音というものはないので、そのあたりの政治的文化的なこともちゃんと学びますよ。

天野:新学習指導要領の導入でオールイングリッシュの授業に変わることになりますが、そちらについては既に準備をされていますか?

松本:準備はしています。
でも、教師が何語で話すのかということばかり注目されますが、それよりも生徒の発言の機会を増やしてあげることが重要だと考えています。
授業は教師のパフォーマンスの場ではなく、生徒の実力を伸ばすのが目的ですからね。
その為、私の学校では、数学や現代文の先生などとも連携し、生徒の発表・発言の機会を増やし、言語や数字を問わず、表現力豊かな生徒を育成するための授業を行っています。

天野:相模女子大学では小学部もありますが、小中高での英語教育の連携なども行っていますか?

松本:一貫しているという強みはあると思いますが、小学校では「外国語活動」だったものが、中学校では「教科」としての英語になるため、連携には工夫が必要だと思います。
小学生でも中三で学ぶ現在完了などを平気で使いこなしますから、連携を考えながら、現場の教師がそういう力をどう伸ばすか、しっかりと引き受けることが大切だと思います。

(2012年2月16日取材)

松本浩欣さん

松本浩欣さん
相模女子大学高等部の英語教師。
中学校の英語教師として8年、高校の英語教師として7年教えている。現在在職のまま日本の大学院の博士課程に在籍しつつ、オーストラリアの大学のオンラインTESOLコースを履修している。

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