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教師がやるべきこと、できることは無限にある!

TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)とは、英語を母国語としない人たち向けの英語教授法のこと。
日本でも質の高い英語教師へのニーズが高まり、最近TESOLが注目されています。
キンジローでは、TESOLを履修した現職の英語教師の方に、履修のきっかけや履修後の変化などをお聞きしました。

シリーズ第4回目にご登場いただくのは、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ日本校でTESOLを勉強中の峰松愛子先生です。

仕事と両立できるパートタイムのコース編成

天野:TESOLを履修しようと思ったきっかけは?

峰松:大学で第二言語習得を専攻していたのですが、熱心な教授陣のもと、日本の英語教育について考えさせられることが多くあり、影響されました。
学んだことを現場で活かしたいと思い、英語教育に力を入れている私立の中高一貫校で英語の専任教師になりました。
とてもやりがいはあったのですが、7年間勤めて、やればやるほど学んだことが活かせない。
何か足りないなと思って、以前から気になっていたTESOLを勉強しようと決めました。
現在、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ日本校で勉強中です。
ここのTESOLプログラムは、パートタイムのコース編成なので、教職を続けながら修士号を取得することができます。
最長5年が限度、通常は2年半〜3年で修了します。
私は、昨年の1月から始め、今も学習中です。

天野:講義を受けてみてどうですか?

峰松:このクラスは現職の教員を対象としているので、クラスメイト全員が現場経験者。
なので、ディスカッションをするときも実際に現場で直面する問題を取り上げ、それをどう克服するか、よりリアルに議論ができるのが学部の講義とは大きく違うと思います。

天野:講義はどのように進められるのですか?

峰松:毎週課題が出され、課題についてオンラインでディスカッションをしたり、授業で実践をしてみてその結果を発表し、お互いに共有します。
講義もオンラインのディスカッションもすべて英語で行います。
教室での講義に出るのは月数回週末のみなので、教員の仕事と両立ができるように考慮されたプログラムだと思います。
ただ、やはり両立しているクラスメイトは大変そうです。

天野:コースの内容は?

峰松:必須科目として、音声学、英文法、第二言語習得などの基礎科目があります。
選択科目としては、社会言語学、談話分析などがあります。
そのほか、TESOL以外の、教職科目をいくつか選択して履修しなければなりません。

実践でどう活かせるかという視点で作られたカリキュラム

天野:印象に残っている授業はどのようなものですか。

峰松:どれも面白く、印象に残っています。
たとえば語用論、英語ではプラグマティクス(言語表現とその使用者・解釈者との関係を取り扱う)と言うのですが、言葉を使うにあたって、社会的な距離や心理的距離の遠い人、近い人で表現をどう区別するかといったことを研究します。
そして、それを実際に授業で教えるときにどう活かせるかも研究します。
たとえば、助動詞のshouldを教えるときに、これまでは単に、shouldは「〜〜すべき」と、人にアドバイスするときに使うと教えてきましたが、実は英語でshouldを使うとすごく上から目線の言葉になる。
代わりにmightやcouldを使う、ということ併せて教えると、より実践的に「使える」英語になります。

天野:高校の新学習指導要領では、英語の授業はすべて英語でやることを基本とすると言われています。それについてどう思いますか?

峰松:すべて英語で行うのは無理だと思います。
効果的な学習を行うためには、いかに母語をうまく使うかがとても大事だということが、研究からわかっています。
たとえば、抽象的な言葉を説明するときに、日本語でその言葉を知っているなら、日本語を与えたほうが早い。

天野:TESOLを履修して、教えることで役立っていることは?

峰松:成績のつけかた、テストのしかた、授業の仕方や内容、すべてにおいて根本的に考え方がかわりました。
たとえば授業で過去完了形を教えるときに、以前ならただ完了形の形を教えるだけでしたが、今は、過去完了形を使って自分の体験を書かせて発表させる、というように、生徒から引き出すようになりました。
成績をつけるときも、以前は小テストをすることが多かったのですが、今は、到達目標に沿って生徒に自己評価をさせ、その結果について、今後の学習の進め方を生徒とディスカッションする、という評価方法もあることを知りました。

インセンティブがあればもっと勉強しようと思う先生は増えるのでは

天野:日本では、なかなかTESOLが知られていませんが、どうやったら普及すると思いますか?

峰松:チャンスがあれば学びたい人は多いと思いますが、現場にいると授業以外の業務がとても多いので、余裕がないのが実情です。
何かしらのインセンティブがあれば違うと思いますが、現場の教員には、教科指導力の他にも学級経営や生徒指導、部活動での指導力が求められます。
教科指導に対するインセンティブがもっとあがれば必然的に、教材研究に割く時間や、シラバスの工夫、授業の振り返りなどに時間が使えると思うのですが......。

天野:今後の目標は?

峰松:教員という仕事が好きで、この先もずっと続けたいと思っています。
TESOLは学べば学ぶほど奥が深くて、まだまだやるべきこと、できることは無限にあると思います。
学んだことを現場でどんどん実現できる教師を目指したいです。

(2012年2月24日取材)

峰松愛子さん

峰松愛子さん
私立の中高一貫校で英語教師として7年間勤める。その後コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ日本校でTESOLプログラムの受講を開始。現在もTESOLの履修を続けている。

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