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日本人が外国語教育に費やす時間は短すぎる!

バングラデシュ出身のモイン氏が、日本国籍を取得し、日本で起業を果たした。
なぜ日本なのか?海外からの視点で見た日本は、我々のグローバル化のヒントになるか!?

日本への恩返しをしたい

天野:モインさんが日本に来たきっかけは何だったのでしょうか?

モイン:私は立命館アジア太平洋大学(APU)の一期生として日本に来ました。

天野:一期生ということは、APUのOBやOG等がいない状況で、どんな学校かもわからずに日本にきたということですか?

モイン:私の父親は仕事で日本に来たことがあったのですが、私は初めてでした。たまたま、在バングラデシュの日本領事館でAPUのポスターを見て、多国籍の生徒が学ぶ学校ということですごく興味が湧いて、日本に行こうと決意しました。

天野:大学卒業後すぐに起業されたのですか?

モイン:もともと起業をしたいという思いはありましたが、大学卒業後は日本の企業に就職しました。その後外資系企業に転職をして、東京に出てきました。そこで働きながら筑波大学のMBAを取得したのです。筑波大学のMBAはすべて英語で行われ、私のクラスでは12か国から来た生徒達が一緒に学んでいました。 経営者になるためにはMBAで学ぶ知識や人脈はとても役に立つと思いました。

天野:母国のバングラデシュではなく、日本で起業した理由はありますか?

モイン:私は日本に恩返しがしたい。日本政府の奨学金でAPUに通うことができました。日本のおかげで素晴らしい高等教育をうけ、就職もできました。日本に感謝をしているから、日本の国籍を取得して、日本で働こうと決めたのです。

バングラデシュと日本の語学教育の決定的な違いは大学入試にある

天野:オンラインでフィリピン人と英会話ができる、オンライン英会話事業を立ち上げられたとのことですが、なぜこの事業を立ち上げたのですか?

モイン:APUの同期でフィリピン人の友達がいて、その人と一緒に事業をスタートしました。私は日本に来て、日本人が英語を話せないことに衝撃を受けました。日本は先進国ですから、発展途上国のバングラデシュと違い、教育制度も整っていて、高い語学力を持っていると思っていました。

天野:APUは英語で授業が行われる国際大学ですが、そのAPUに通う生徒ですらそう感じたのでしょうか?

モイン:APUに来る生徒は比較的英語力が高いと思いますが、APUは別府の山奥にあり、学校から外にでると誰も英語が話せない。そんな状況にショックを受けたのです。

天野:バングラデシュではどのような英語教育を受けているのですか?

モイン:バングラデシュは小学校に入る前から英語教育が始まり、高校を卒業するころには、日常会話レベルの英語力は誰でもあります。

天野:日本でも小学校から英語教育が始まりましたが、早くから英語教育を始めることが良いという例になりますか?

モイン:少しくらい早くから英語教育を始めたとしても、日本の英語教育に費やす時間は短すぎます。それに「聞くだけで英語がしゃべれるようになる」というようなものもありますが、聞くだけで英語ができるわけがない!実際に私がどうやって日本語を学んだのかわかりますか?私は2千時間以上勉強しました。日本人はたった数百時間英語を勉強しただけで「こんなに勉強しても英語がうまくならない」と言って諦めてしまいます。言語を学ぶのは容易ではない。本当にあなたは胸を張って一生懸命勉強した。と言えるほど英語を勉強していますか?と私は聞きたい。

天野:なるほど。確かに語学に費やされる時間は日本は短いですね。それでも今のまま、仮に語学教育の時間だけ大幅に伸ばしても、語学力が大幅に上がるようには思えないのは、やはり受験制度などの既存の教育制度の目標点が向いている方向に問題があるのではないでしょうか?

モイン:バングラデシュでは、大学入試の為の統一試験はイギリスのA-Level(Advanced Level)試験と同じものが出されます。英語以外の教化も英語で問題が出されるため、英語ができなければ話になりません。英語教育の目的・目標をはっきりさせることが大事です。

2012年10月26日取材

エムデ モイン

エムデ モインさん
ピクト株式会社 代表取締役社長
立命館アジア太平洋大学(APU)に留学。その後日本での職務体験と筑波大学のMBA資格を取得し、起業。日本人の英語力強化の為、オンライン英会話や留学事業を手掛ける。

編集後記

「日本に恩返しをしたい」というモイン氏の言葉は非常に印象的だった。
モイン氏のように日本の政府から奨学金をもらって留学している外国人留学生は多いという。
それなのに、日本では外国籍の人が働ける環境があまりなく、ほとんどの学生が卒業後に帰ってしまう。
日本政府は外国人の学びにお金を使っているだけという現状をモイン氏は打破したいというのだ。
日本で暮らしている我々は意外とこのような状況を知らない。
グローバル化が進むということは、日本から出ていく人たちだけでなく、日本に入ってくる人たちをどう受け入れて、どのように向き合っていくのか、社会全体で考えなければいけない。
奨学金を払って学生に来てもらっただけで満足しているようではダメだ。その人たちとのつながりを生かして、日本をグローバル化に導いていかなければいけない。

キンジロー編集長 天野智之

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