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留学経験は当たり前!グローバル化に危機感を抱け

企業を取り巻く環境が著しく変化する中、企業が求める人材にはどのような変化があるのか?!
企業の海外事業活動を支援し、海外進出を促進している一般社団法人 日本在外企業協会の西川氏と矢部氏に話を伺った。

留学経験は当たり前の時代に!

天野:メディア等を通じて、日本の企業が海外への事業展開で苦労していることが伺えますが、実際のビジネス環境はどのようにグローバル化の影響を受けているのでしょうか?

西川:私は総合商社に長く勤めていましたが、商社では元々海外との仕事が多く、語学力堪能な人が求められていました。
一昔前までは外国語大学出身の人等「語学力」に重きを置いた採用がされていたのが、最近では語学力だけではなくプラスアルファの能力が求められる傾向が強くなってきています。
最近の学生は、単なる語学留学ではなく、発展途上国でのボランティア活動やインターンシップなど、経験できることの幅が広くなってきています。
「どこの大学に行ったのか?」ではなく「大学で何をしたのか?」ということが今後さらに重要視されるようになります。

矢部:私はメーカーに勤務していましたが、今まではあまり海外とのやり取りでフロントに立つことのなかった部署の人たちも、海外のグループ会社や関係会社と定期的な打ち合わせやメール等でのやり取りが発生するようになってきています。
そのため、国際系の部署を希望しなくても、語学力や海外経験が必要になってきています。

天野:最近では採用の段階でTOEIC®で一定点数を求めるなど、英語ができることが前提となってきていますが、企業の求める人材に他には何か変化はありますでしょうか?

西川:確かに多くの会社が採用基準や昇進基準にTOEIC®の点数を用いています。
しかし、一部の先進的な会社では「英語は出来て当たり前なので、あえてTOEIC®の点数を課さないという会社も出てきています。

日本は「危機感」が無さすぎる!

天野:英語ができない人はそもそも会社に必要無いということの表れですか?

矢部:英語が必要か不必要かというような問題ではなく、英語ができないと仕事に支障が出るのです。
自動車にしても電機にしても日本の大手メーカーの売上比率を見ると圧倒的に海外での売り上げが高い。
つまり海外とのビジネスは不可避であり、そのためには英語が無いと業務自体が進まないのです。

天野:いまだに学校教育で英語はどれくらい教えるべきか等の議論がなされていますが、社会に出ると、もうそのような議論をする余地もないほど英語は必須スキルになっているということですね。

西川:グローバルなビジネスの場では既にそうなっています。
一方で、教育現場だけでなく、企業にも意外と危機感が無いところが多いのが今の日本の現状です。

矢部:たとえば、人事担当者に「人事に必要なスキル」についてアンケートを取ると「語学力」という答えは最も少ない。
つまり語学力のある人材を採用する立場の人事が語学力の必要性をあまり感じていないのです。

天野:同じ企業の中だけでもグローバル化に対する意識の差が生じているのですね。

西川:同じ企業内でも、所属部署やジェネレーションによる意識の差もあります。
最近では異文化対応力が求められるケースが増えています。
同じ会社内だけでも部署によって文化は違います。
違う会社間ではもっと違う文化を持った人たちがたくさんいる。
海外に限らず日本国内でも「異文化空間」が存在しており、その気になれば国内でもある程度の異文化体験は可能です。

どこでも働ける人材こそが真の「グローバル人材」

天野:企業から見た「グローバル人材」とは、どのような人材を表していると思われますか?

西川:私は「どこでも働く意識を持った人材」だと思っています。
アメリカでも中国でもアフリカでも、本当に優秀な人材はどこに行っても優秀です。
「日本では優秀だが、海外では優秀ではない」というのは、実は嘘だと思います。
ただし、どの国に行っても「英語」は必要です。
本当にグローバルに活躍したいなら、必要最低限の英語を身に付けることは必須です。
グローバル企業のトップに日本人がほとんどいない理由の一つとして「英語力の欠如」が挙げられていることは確かだと思います。

矢部:私は「異文化の存在を理解し、リードできる人材」だと思います。
先ほど西川が日本国内でも異文化空間が存在していると言いましたが、価値観や文化の違いを知るということはとても大切です。
そのためには海外に出るという経験は貴重です。
海外には大きな可能性がある。
若い方にはとにかく1度で良いから海外に出る体験をして欲しいと思っています。

天野:私自身も留学経験がありますが、外に出ることで新しい学びがたくさんあります。
日本のことについても、外から見ることで初めて気づくこともあり、逆に日本が好きになりました。

西川:可能であれば大学よりも高校で、少しでも早い時期に海外経験をして欲しい。
そしてどんな場所、どんな仕事でも前向きにチャレンジするという姿勢を養って欲しい。
誤解しないで欲しいのですが、英語だけできても仕方ありません。
グローバルな仕事をする上で必要不可欠で、かつ強力な武器が英語力だということなのです。

2012年12月5日取材

西川裕治

西川裕治さん
一般社団法人 日本在外企業協会 広報部長 兼 『月刊グローバル経営』編集長
1976年に広島大学工学部卒業、日商岩井(株)(現・双日(株))入社。電力プラント、通信機器、産業機械、建設機械の海外営業、ODA(政府開発援助)案件などを20年間担当。その間、インドネシア、スリランカに各4年(計8年)駐在。 1996年以降、広報・人事・総務、日本貿易会への出向(「日本貿易会月報」編集長)などを経験し、2012年4月より現職。

矢部英明

矢部英明さん
一般社団法人 日本在外企業協会 業務部 主幹
1978年に東京大学工学部卒業、(株)日立製作所入社。大型汎用コンピュータの開発設計に従事。日立ヨーロッパ社(ロンドン)にて海外業務研修を1年間経験する。その後アメリカシリコンバレーにある日立データシステムズ社への出向も経験。

編集後記

企業の求める人材と教育現場の教育方針の相違が指摘されている。
しかし企業内においても、部署によってもその文化や考え方が大きく異なる。
「グローバル人材」ということで、語学力の強化など様々な取り組みを日本全体で模索しているが、結局は一人ひとりの意識の問題なのかもしれない。
意識を変える為には、環境を変えるしかない。
日本はもうグローバル化が不可避だと言われているが、肌でそれを感じている人はまだ少ないのが現状だ。
諸外国では国策として留学や国際交流など、グローバル化の推進をしている国も少なくない。
日本でも危機感の持っている人たちがそれくらいの強制力、そしてリーダーシップを持ってグローバル化を推し進めていくことが必要なのだろう。

キンジロー編集長 天野智之

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