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「内向き志向」は大人の言い訳!子供のための教育を

中学校・高等学校の英語教員が所属する研究会の全国組織である全国英語教育研究団体連合会(全英連)の会長を務める東京都立田園調布高等学校校長の桑原洋氏に話しを伺った。

昭和25年に結成された歴史ある英語研究会組織を率いる

天野:全英連の成り立ちと役割を教えて下さい。

桑原:全英連は昭和25年に結成された中学校と高等学校の英語教員の研究会です。
各都道府県が持ち回りで毎年1回全国大会を行っています。
また、各県の研究会の会長が年に2回集まって全国理事会も行い、情報交換をします。
その他、全国高校英作文コンテストや英語スピーチコンテストも開催し、英語教育の進展に努めています。

天野:全英連は60年以上の歴史があり、約6万人の英語教員が所属する大きな組織ですね。

桑原:研究会としてはこれほど大きな組織は珍しいと思います。
ただ、大きいから良いということではありません。
生徒の為のスピーチコンテストや英作文コンテストは実施していますが、教員の指導力をあげる為の研修などが不十分だと思いますので、今後教員の為の企画などを増やしていきたいと考えています。

トップダウンの英語教育改革ではなく「プロセス」重視の改革を

天野:文部科学省が主導で、新学習指導要領の実施など、英語教育の改革が活発に行われていますが、全国の英語教育を見ていて、改革の効果というのは表れていますか?

桑原:「コミュニケーションを重視」とする英語教育の方向性は良いと思います。
しかし、現場の視点を反映した改革を行わないと成果に結びつきにくいと感じています。
コミュニケーションを重視すると言っても、生徒が「英語はコミュニケーションのための道具である」ことを授業中だけでなく、その他の場面でも体験できる機会を設けないと難しいと思います。
改革のゴールにたどり着く為には、どのようなプロセスが必要か、生徒や教員の視点も生かして実施して欲しいと考えています。

天野:韓国や台湾など、近隣諸国で英語教育改革を進めている前例を参考にすべきというような意見もあります。

桑原:海外で成功している事例は日本でも活用できると思います。
国に関わらず、同世代の若者に合う指導上のヒントがあるはずです。
日本の英語教育だけが特別であるとは思えません。

天野:現状、英語教育については諸外国よりも日本の英語教育が遅れていると言われる状況になっていますが、理由はどこにあると思いますか?

桑原:英語教育に関する意識の問題が大きいと思います。
韓国などは国策として英語教育に力を入れています。
学校だけでできることには限りがあります。
外国の学校との連携やICTの活用などには行政や民間組織の協力も必要不可欠です。

大人の責任!教育に向き合い真剣に子供のことを考える

天野:桑原先生の育てたいと思う生徒像はどのような生徒でしょうか?

桑原:日本を離れても暮らせる力をつけることです。
日本に特有な文化や特色を知ったうえで、他国の人たちと一緒に暮らしていける。
これからの時代どこでどうやって生きていくのかは、若い世代の人たちが考えることで、我々大人が決めることではないのだと思います。
日本の高校生全員が海外での生活を学生時代に体験できるわけではありませんから、海外留学が必須だとは思いません。
しかし、日本国内にいながらも海外の人たちと触れ合える環境作りは必須だと思います。
生徒は「関心」を持てば自発的に学びます。
コミュニケーションの為に「外国語の学習」が必要だと感じれば、外国語を学ぼうと努力をする。今はその必要性を感じていないだけです。

天野:若者の内向き志向とも言われているなかで、言語や海外に対して関心を持ってもらう為にできることとはなんでしょうか?

桑原:「内向き志向」というのは大人から見た視点だと思います。
不景気で私費留学に行かせられる家庭が減ったなど、大人の事情で子供たちが影響を受けているのだと思います。
それを若者が変化したと、指摘している。
大人の社会の変化が原因だと思います。
生徒の本質は今も昔も大きくは変わっていません。
刺激を与えてあげればキチンとそれに反応します。
内向き志向の傾向があるとしたらそれは大人の責任です。
「現代の若者」について批判するのではなく、何が不足しているのかを具体的に考えることが、大人の責任なのではないでしょうか。

天野:留学制度や奨学金の導入など、学校や行政も若者の海外経験には力を入れ始めているように見えます。

桑原:学校教育で行うことと、社会で支援することを明確にすることも必要なのではないでしょうか。
英語にしても週数時間の授業だけで英語がマスターできるわけではなく、校外での学習や自己努力が必要です。
生徒が英語に触れる時間を増やすためには、日本の社会ではどうすべきか。
たとえば、英語キャンプを実施するなど、具体的な方策を考えていくことが不可欠でしょう。
学校教育だけではなく社会全体としてできることも考えていく必要があるでしょう。

2012年12月26日取材

桑原洋

桑原洋さん
東京都立田園調布高等学校校長
全国英語教育研究団体連合会(全英連)会長

編集後記

「内向き志向という言葉は大人の責任逃れの言い訳だ!」という強い言葉に感動した。
確かに子供が内向きになりたくてなったのではなく、経済的理由など、様々な大人の都合や環境の変化で留学者数が少なくなったことの責任を子供たちに負わせるのはおかしい。
外を向かせる為に私達大人が何をできるのだろうか?
保護者にしても、子育てをすべて学校にまかせっきりになってしまっている親も多いのではないだろうか。
桑原さんの指摘の通り、社会全体として将来の日本を考え、そしてその将来を支える子供たちのことを考え、具体的な答えを導き出していくこと。
これしか日本の未来を作る方法はないのだろう。

キンジロー編集長 天野智之

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