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日本は世界一クリエイティブな国!東京は世界一クリエイティブな都市

内向き志向、グローバル化から取り残されていると言われて久しい日本人。
しかし、日本が世界に誇れることはたくさんある。
大事なことは、自国の良さを知り、それを世界に発信することだ!
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授であり、日本のコンテンツビジネスに詳しい中村伊知哉氏に伺いました!

天野:中村さんは以前、日本は世界一クリエイティブな国だとブログにも書かれていましたが、本当なのでしょうか?

中村:2012年4月にAdobe社が英米独仏日の各1000人、計5000人の成人に聞いた国際アンケートで、「世界一クリエイティブな国は日本」「クリエイティブな都市は東京」という結果が出ています。36%の人が日本を最もクリエイティブな国と評価し、2位のアメリカ26%に大差をつける結果となった。ポップカルチャー、ファッション、食べ物、ケータイ文化、どれも日本の文化は抜きんでています。

天野:確かに日本の文化がかっこいいという意味で、「Cool Japan」という言葉もメディアでよく耳にするようになりましたが、海外でそれだけ日本が評価されているということでしょうか?

中村:Cool Japanという言葉は10年も前から使われていて、すでに日本のアニメや漫画などのコンテンツは海外でかなり知られています。
しかし、当の日本人がそれをあまり認識していません。
日本人は自国の文化にもっと誇りを持ち、自信をもって海外と接するべきです。

天野:確かに、製造業をはじめ、海外進出をして成功している日本企業はたくさんあるのに、「グローバル化の遅れ」や「内向き志向」について危機感をあおるような報道をたくさん耳にしますね。

中村:日本のコンテンツビジネスは、確かに海外で高い評価を受けていますが、残念なことに、日本のコンテンツの海外での売り上げはわずか4%しかありません。
対して、アメリカのコンテンツビジネスは自国以外の国で19%以上の売り上げを稼いでいます。
日本は、よいコンテンツを持っていて海外での支持も高いのに、それをビジネスにつなげられていないという問題があります。

天野:海外では日本のアニメ専門チャンネルがあるほど、日本のコンテンツは根づいているのにビジネスにはつながっていないとはどういうことなのでしょうか?

中村:ひとつには、海賊版(偽物)の流通という問題があります。
海外では、海賊版を日本ほど厳しく取り締まっていない国も多く、偽物の作品が出回ることで、知名度は高くなりますが、実際の売上にはつながらない。
日本人はそれぞれの国の文化や国民性等も理解したうえで、「ビジネス戦略」を作っていく必要があります。
たとえば、コンテンツだけを売るのではなく、他の産業と融合して、新しい商品を開拓していくなどです。
今やすべての産業がネットを介して世界とつながっていますから、海外で稼げる知恵とスキルはますます重要となってくるでしょう。

日本の事を知る。それが真のグローバル人材

天野:日本が世界経済の中で存在感を高め、グローバルに活躍するためにはどのようなスキルを身に付ける必要があるとお考えですか?

中村:もちろんコミュニケーションスキルやディスカッションといったスキルも必要ですが、私はグローバル人材に必要な資質を次のように考えています。
「日本の事(自分の事)をわかっていること」
「他との違いを分かっていること」
「それらを表現できる力」の3つです。
私自身海外で暮らした経験がありますが、日本について、海外に行くことで初めて気づいたことがたくさんあります。
また、現地の人から「日本のことを教えて欲しい」と言われた時に、自分の国のことをよく知らないとのはすごく恥ずかしいことです。
自分の生まれた国のことをよく知り、それをキチンと表現できる。
そのための最低限のスキルはとても大事です。

天野:単に語学ができるだけでなく、知識や教養、コミュニケーション力も必要だということですね。

中村:グローバル化というとどうしても語学力が注目されてしまいますが、経団連のアンケートを見ると、企業が求めるスキルとして最も上位にくるのは「コミュニケーション力」や「チャレンジ精神」だったりします。
ところが、学校で教えることは、社会のニーズとは大きく乖離している。
これは学校側も大いに反省するべきだと思います。

天野:教育現場もグローバル化を求められているのに変われていない学校が多いというのはありますね。

中村:日本の学校現場は、これまで新しいことに対してネガティブでした。
たとえば、インターネットを学校に導入しようとすると、個人情報が漏えいするのではとか、保護者からクレームがくるのでは、など不安ばかりが先だって、前に進めないという状況が長く続いていました。
韓国のある小学校ではSNSを導入し、学校で日々行っていることを発信したところ、今まで見えなかった部分が透明化されて、保護者からの信頼感も高まり、とてもよい結果につながったという例があります。
日本も大いに学ぶべきだと思います。
とはいえ、私は、悲観はしていないんです。
なぜなら、日本の先生の質が高いからです。
日本の先生方は世界でもトップレベルですよ。
今は学校に求められることが多すぎて、大変な思いをされているとは思いますが、本来、日本の先生方は、知識も豊富ですし、仕事への取組みも非常に熱心です。
学校自体は、変化に対してネガティブだと言いましたが、ここ数年で、急速に学校の情報化が進み、デジタル教科書の導入も進んでいます。
一度変わるとなると、先生方は熱心にそれを研究し、創意工夫して自分のものにしようとする。
そのことに対して、先生方はもっと自信を持っていいのではないでしょうか。
それにより、生徒も自信を持つようになるでしょうし、日本も大きく変わると思います。

(2012年12月25日取材)

中村伊知哉

中村伊知哉さん
1961年生まれ。京都大学経済学部卒。慶應義塾大学で博士号取得。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策を政府で最初に担当する。その後、退官し渡米。1998年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長。2006年より慶應義塾大学教授。内閣官房知的財産戦略本部コンテンツ強化専門調査会会長、文化審議会著作権分科会専門委員、文部科学省 学校教育の情報化に関する懇談会委員、文部科学省コミュニケーション教育推進会議委員。社団法人融合研究所所長、デジタルサイネージコンソーシアム理事長、デジタル教科書教材協議会副会長、NPO「CANVAS」副理事長、社団法人ソーシャルゲーム協会事務局長、ミクシィ社外取締役などを兼務。著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)等多数。

編集後記

普段から着物を着ている中村さんは、伝統や和を重んじている方に見えるが、アニメやIT等、モダンで新しいコンテンツやテクノロジーに大変明るい方で驚いた。
「良いものは良い!」と、堂々と自分自身をさらけ出している姿はまさにCool Japanを身を持って表現しているようだ。
中村さんはロックバンドのディレクターから官僚に転身するなど、信じられないような経歴を持っている。
しかし、そのように様々な環境、両極端な視点で物事を体験してきたからこそ、本当に良いものは国境や世代に関わらず良いと言えるのかも知れない。
インタビュー内でも「自信を持つ」という事をおっしゃっているが、日本人が自信を持つ為に必要な事は、多様な経験を積む事なのかも知れない。

キンジロー編集長 天野智之

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