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男女別学、国際バカロレア 日本の教育を変える新しい取り組み

「共学なのに授業は男女別学」「徹底したCritical Thinking(クリティカルシンキング)スキルを養う教育」など、様々なユニークな取り組みを行っているかえつ有明中・高等学校。
かえつ流の教育について、国際交流部長の久保敦氏に話を伺った。

年齢や性別、発達段階に合わせた教育が必要

天野:世の中ではどんどん男女別学が減り、共学が増えているなかで「授業は男女別学」というのは世の中の流れに逆行しているようにも見えますが、なぜ別学をすすめるのでしょうか?

久保:まず女の子のほうが男の子よりも精神年齢が高いということ。
中学生の男の子が授業中にくだらないことでワイワイ騒いでいるのを女の子たちが冷めた目で見ている。
というような状況があります。 また、年ごろの子たちなので、英語の授業などで、ペアワークやグループワークをさせると、結局ほとんどが女の子同士か男の子同士でグループになります。
男女とも性差がありますので、教え方やクラス運営の仕方を男女分けて行ったほうが、効率的かつ効果的な教育を提供できると考えております。
しかし、授業以外の学校行事やクラブ活動などは男女一緒で行います。

天野:留学者数の統計などを見ても、女性のほうが海外留学に出る割合が高く、男性のほうがどちらかというと内向きな傾向が見てとれます。

久保:女子のほうが活発で留学に対しても前向きな子が多いと思いますが、弊校では早い時期から留学に興味を持ってもらえるような働きかけも積極的に行っています。
中高一貫校の強みを活かし、中学生の頃から英語研修や高校に入ってから参加できるセメスター留学(半期の留学)やアカデミックイヤー留学(1学年間の留学)の準備を進めます。
英語試験においても、学年やレベルに合わせて、「英検」「TOEFL」「TOEIC」「ケンブリッジ英検」など幅広い試験に対応できる体制を作っています。

IB(国際バカロレア)の考え方に日本の教育を変える糸口がある!

天野:久保様のお名刺に「IB(国際バカロレア)研究員」とありますが、バカロレアについてどのような活動を行っているのでしょうか?

久保:弊校はバカロレアの認定校ではないのですが、バカロレアの考え方に共感し、教科が連携したCritical Thinkingを徹底的に身に付けさせる教育を行っています。
Critical Thinkingを日本語にすると「批判的思考」とか「論理的思考」というような訳され方をされてしまいますが、この語が持つ本来の意味とニュアンスが少し違うのであえて日本語に訳さずに使っています。
Critical Thinkingを学ぶということは「多様性」そして「多角的な視野」を持つということでもあります。これからのグローバル社会で生きていくためには、Critical Thinkingを身に付けなければいけません。

天野:Critical Thinkingを鍛えるとは具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?

久保:例えば英語Honors ClassのTOK(Theory of Knowledge)の授業では、「私は誰なのか?」「宗教は必要か?」など、哲学的な問いかけを行い理性的な考え方と客観的精神を養うものです。
また、中学のサイエンス科では、ブレーンストーミング、メモティキング、インタビューの仕方などの型を学びます。
そして、他者に発信するときの方法として「時系列5W1H法」「比較・対照」「事実・意見」「原因・結果」などのスキルを習得させます。
これはすべての教科で行う必要があります。
そのため、弊校では全5教科の教科主任が集まって、お互いの定期試験をブルームの「タキソノミー」を基本に評価を行っています。
知識・理解問題の割合が多すぎないか、応用・分析などの問題をどれくらい入れるか。など、教科間でも連携しています。
知識型の試験を行うと、生徒の勉強方法も暗記型の勉強方法になってしまいます。Critical Thinkingを鍛えるためには先生も努力が必要です。

天野:そこまで徹底した教育を行っていても国際バカロレア機構の認定校は目指さないのですか?

久保:国際バカロレアであれば、基本的な言語は「英語」となるべきです。
しかし私たちはすべてを英語で行うことが良いことだとは思っていません。
日本には日本式のIBの在り方があるはずです。
IB資格を認める大学が増えることで日本の教育がガラっと変わるはずです。
なぜなら、先ほど述べたように、従来の日本の暗記型の教育ではなくなり、グローバル社会で必要とされる「学習した知識や自ら調べたことからある答えを導き出し、他者に論理的に説明でき、理解させる」語学力やコミュニケーション力、論理的思考力などが身に着く教育へと変わるからです。

国際併願®で海外を目指す!

天野:IB資格を大学が認めると教育が変わるという話がありましたが、具体的には大学受験を変えるということでしょうか?

久保:センター試験も変えるべきだと思います。
IBの試験のように「考えさせる」問題が必要です。
また、年1回だけしかない一発勝負の試験というのも良くありません。
高校の3年間でどのような学力を総合的に身につけたかを評価できるようなシステム作りが必要だと感じています。

天野:世界のトップ大学などはほとんどIBでの入学資格を認めているので、IB資格を取得できる日本の学校が増えると、現状では皆海外に進学するしか道がなくなってしまい、結果優秀な人材が外に流れてしまうということにもつながりそうですね。

久保:弊行では「国際併願®」で日本の大学も海外の大学も両方同時に出願することを勧めています。
グローバルな人材は「どこでも」「どんな立場でも」活躍できる人材です。
そのため優秀な人材は日本の大学も海外の大学も両方行ける力があるのです。
私たちは徹底したCritical Thinkingの教育で、グローバルな人材を育てていくべく、日々努力しております。

天野:文部科学省でも、今後5年間でIB資格を取得できる学校を国内で200校まで増やす。
というような指針を出していますが、IB認定校が増えることは、日本の教育が良い方向に向かうひとつの解決策だということですか?

久保:IB認定校になるためにはネイティブの先生の確保や様々なハードルがあり、容易ではありません。
そのため、先ほど申し上げたように「日本式のIB」というようなものができれば、国内でIBを拡げることができると思います。

天野:実際に教育現場で働いている中で、理想だと思う教育というのはありますか?

久保:私はユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)を日本で開校したいと思っています。
UWCは、世界各国から選抜された高校生を受入れ、教育を通じて国際感覚豊かな人材を養成することを目的とする国際的な民間教育機関のことです。
イギリス、カナダ、シンガポール、イタリア、アメリカ、香港、ノルウェー、インド、オランダ等にカレッジ(高校)が開校されていますが日本ではまだ開校されていません。
世界中の優秀な学生が一緒に学べる。しかも英語でその教育が行われること。それがこれからのグローバル社会での理想的な教育のあり方だと思っています。

取材日:2012年12月12日

久保敦

久保敦さん
かえつ有明中・高等学校 国際交流部長・外国語科主任・IB(国際バカロレア)研究員
英語の教材にCritical Thinking Skillsを始めて導入した検定外教科書「NEW TREASURE」(Z会)の編集員を努める。これからの教育には文系と理系の枠を越えた知識が必要であると痛感。日本型IB教育プログラムの開発とその促進を研究している。

編集後記

Critical Thinkingという言葉を近年耳にする機会が多くなった。
しかし久保先生のように、具体的にCritical Thinkingを養うとはどういうことなのか?どう授業に組み込んでいくのか?Critical Thinkingのように定量的に表せないスキルについて具体的に語れる人は少ない。
あいまいなものを具体化して生徒に伝えていく。
それはまさに今教育現場に求められていることなのではないだろうか。
英語だけでなく全教科が連携して実現するグローバル教育。
久保先生の実践されている教育が今後どう発展し、拡がっていくのか期待が膨らむ。

キンジロー編集長 天野智之

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