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これからは、日本一国では何ごとも解決しない。

「大学生の人材国際競争力」の向上を目指し、日本版ギャップイヤー制度の導入を、産官学に働きかけている、一般社団法人 日本ギャップイヤー推進機構協会(以下JGAP・http://japangap.jp/)。代表理事の砂田薫氏にお話をうかがいました。

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制度化によって望めばだれでもGYができる時代に

天野:私は、ギャップイヤーではなく留学でしたが、確かに海外での経験は大変役立ちました。

砂田:実は、個人でも留学したり、海外ボランティアをするなど、GYのようなことをしている人は昔からいます。
でも、私は、国なり大学の「制度」として定着させなければいけないと思っています。
制度にすることによって、公平性が生まれるからです。
お金がかかるからとか、休学すると親に負担をかけるとかの理由で諦めなくていいように、大学や行政が、制度としてGYを認めるようなってほしい。
望みさえすれば誰でも人材育成に寄与するGYを経験できる世の中にしたいのです。

日本の良くないところは、一度レールを外れるとなかなかばん回できないところです。
卒業後、すぐに就職しないで留学やボランティアをしたら「履歴書が汚れる」「空白の履歴書はまずい」という言い方をしたりする。
ギャップイヤー文化が浸透すれば、学生は金太郎飴のような「新卒一括採用」の呪縛から逃れられるし、単線型の人材評価が崩れ、ダイバーシティーの概念が日本にも定着するきっかけになります。

天野:私も留学後、大手企業に就職し、その後退職して起業しましたが、会社を辞めるときにはレールを外れるということに強い恐怖を感じました。
でも、実際にはレールを外れてもなんとかなるし、レールの上にいるからこそ不安なのだということもわかりました。
レールをはずれるという選択ができたのは、留学経験で強くなったこともあると思います。
ところで、砂田さんがこういう活動をされるようになったきっかけは何ですか?

砂田:一つは、自分自身がGYを経験したからです。
1973年(昭和48年)に上京して大学に入ったのですが、学園紛争のため入学式も授業もありませんでした。
途方に暮れて、安い映画館をはしごしたり、いろいろなアルバイトをしたり、背景の違う人たちと日夜話し込んだり飲んだり、そんな社会体験から世の中のことを学んでいった。
そのことが、仕事としてのマーケッターとして大変役に立った。
大学で学んだことは忘れても、その経験は忘れないんですよ。
若いときに、そういう期間を持つことはとても大事なことだと痛感しました。
もう一つは、私は大学院で学生や院生のメンターをしていたのですが、講義中に講義を聞かないで、パソコンで就職情報を集めている学生がたくさんいるのを目の当たりにしたことです。
こんなことでは、優秀な学生が育つはずはない。
「経済の失われた20年」の次には、確実に「高等教育の失われた10年」がやってくる、と強い危機感を感じました。
しかもそうやって2年もの期間、自分を殺し、就職したにもかかわらず、3割が入社3年で辞めてしまうというのも大変な問題です。
私は、経済団体や行政に、就活の一層の短期化・晩期化を提言しています。
その分GYを体験してもらえば、学生は長すぎる就活に疲弊することなく安心して学業に励めるし、GYで自分を見つめ直すことによって、本当に行きたい会社に就職する力もつけられる。
企業も優れた人材を得ることができる。また、起業する人材もできる。

大事なのは、GYで何をするか。

天野:GYが制度として導入されたとして、次に問題になるのは、GYで何をするかでしょうね。

砂田:そのとおりです。
ただ海外に行くだけだったら、誰だってできる。
GYによって、自分は何を学んだのか、どんな人と共感できたか、どんな感動を得たか、何があなたを変えたのかが重要です。
なにも海外留学ばかりがGYではなくて、国内の限界集落にボランティアやインターンに行ってみる「国内留学」というのでもいい。
ニューヨークに行くよりもよっぽど大きなカルチャーショックを受けると思いますよ。

天野:何をするかを自分で見つけられる人もいれば、何かヒントが必要という人も多いと思います。
そういう人たちに情報を提供していくことも大事ですね。

砂田:まさにそのとおりで、今、JGAPがやっていることは、GY体験者の声を集めることです。
それをサイトで発表していくことによって、GYってこうなんだ、こんなにいい発見があるんだ、ということがイメージしやすくなる。
GYの導入には、産官学はもちろんですが、親御さんの理解も重要なのです。
体験談を集めることで、親御さんの不安解消にもつながると思います。

(2011年7月4日取材)

砂田薫さん

砂田薫さん
早大招聘研究員(価値創造マネジメント研究所)、朝日新聞社社友。日本創生の東京21Cクラブ、社会起業支援のSVP東京に所属。慶応義塾大学(心理学専攻)卒業。 朝日新聞社入社後、国立ダブリン大学マーケティング修士課程修了。東工大大学院博士後期課程イノベーション専攻単位取得満期退学。初代の朝日新聞社広告局シンガポール駐在として、事業所立ち上げ。デジタルメディア部長、メディア推進部長等を歴任。関連会社数社の非常勤取締役を併任。2003・4年に、朝日新聞社主催「図書館を考えるフォーラム」(有楽町朝日ホール)をプロデュース。朝日新聞記事データベース「聞蔵」「朝日けんさくくん」の名付け親(商標登録)。

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