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間違いも楽しみながら学べばいい!(パックン)何でもあり!と思えれば英語は楽しくなる!(マックン)

ハーバード大学卒のアメリカ人&自称「世界一英語嫌い」という異色の漫才コンビ、パックンマックンに、外国語を学ぶコツ、英語を好きになるコツを聞いてみました。

日本の、組織人を育てる仕組みは素晴らしい

天野:パックンは1993年に来日されていますが、どうして日本に?

パックン:大学を卒業するときに、ALTとして日本に行くことになった友だちに誘われたのが大きなきっかけ。
海外に出て冒険したいという思いもあったしね。

天野:日本に来て驚いたこととか、違和感を感じたことは?

パックン:日本に住んで20年になるけど、まだまだ驚くことばかりですよ。
たとえば、家では靴を脱ぐという“スリッパ文化”には慣れたつもりだったんだけど、子どもが小学校に入って、“上履き文化”に出会うわけです。
「えー!?大人なのに上履きはかないといけないの!?」みたいな。
あと、親同士で○○パパと呼び合うのも驚いたね。
○○ちゃんのパパじゃなくて、○○パパですよ!

天野:お子さんは日本の公立小学校に通っているんですね。

パックン:日本って、掃除当番とか給食当番ってありますよね、あれもびっくりした。
最初は、「その時間勉強したほうがいいんじゃないの?」と思ったけど、今では、すごくいい社会勉強だと思う。
日本の組織人を育てる仕組みはすごくいいところだと思うね。
でも、アメリカの教育にも、議論ができたり、自分の意見が言えるところとか、いいところがある。
両方のいいところを取り入れたいね。

天野:日本人は外国人に優しいというイメージがありますが、実際のところどうですか?

パックン:アパートを借りるのが大変だったね。
張り紙に「ペット可、子ども可、ピアノ可、外国人不可」とか書いてあるんですよ。
「オレ、ペット以下!?」みたいな。

マックン:いっしょにタクシーを止めようとしたら、必ずパックンの前じゃなくて僕の前に止まるしね。
外国人だからビビるんだろうね。

パックン:それでマックンだけさっさと乗って帰っちゃうしね。

マックン:それは仕方ないでしょう。僕のところに止まってくれてるんだから!

パックン:相手は優しいつもりなんだろうけど、壁を感じることってあるね。
「納豆食べられます?」とか「お箸使えます?」とか聞かれると、気をつかってくれているんだろうけど、「あ、ガイジンって思われてるんだな」と思っちゃう。

天野:日本人はグローバル化しなければという危機感が非常に高まっていますが、アメリカ人に、そういう感覚ってないように思うのですが。

パックン:アメリカは内需も大きいし、GNPもダントツで世界一だし、危機感は確かにないよね。
世界中どこでも英語は通じるし。
日本は人口が縮小しているし、市場も縮小しているから、どうしても外に目を向けるしかないでしょう。
でも、日本の良さも忘れてはいけない。
日本人でありながら国際人であるべきですよ。

天野:パックンは外国で仕事をしているわけですが、大変なことってなんですか?

パックン:大変なことと楽しいことは表裏一体だからね。
外国語を覚えるのは確かに大変だけど、言葉を勉強することで文化の違いも理解できるし、いろいろな発見があって楽しい。
たとえば、マックンに教わったのは、「ご苦労さま」と「お疲れさま」の違い。
教科書には、どっちも同じ意味って書いてあるけど、実際は相手によって使い分けないと大変なことになる。
そういうこと一つひとつ楽しんでやればいいんだよね。

英語って勉強するものじゃなくて、使うもの

天野:マックンは英語をどうやって勉強したんですか?英語を勉強するようになったのはパックンとコンビを組むから?

マックン:僕はね、中学2年で英語が大嫌いになって以来、ずっと拒絶してきたんですよ。
だけど、周囲からいつまでもそれじゃダメだと言われて、英会話教室に引きずられて行ったんです。
英会話を習う前に受けた英語のテストでは100点満点中23点。
それが、3カ月後には、都内の最難関の高校入試問題で98点がとれちゃった。
すごいでしょ?しかもその入試問題を見て、「これ、国語で言ったら小2レベルの内容じゃん」って思って、すごいショックでしたよ。なんで僕はこんな簡単なものが今までできなかったんだろうって。

天野:どうして3カ月でそこまで変わったんですか?

マックン:英会話教室では、先生は日本語がわからないので、知っている単語を羅列したりジェスチャーを使ったり、とにかく日本語以外でなんとかして言いたいことを伝えないといけないんですよ。
そういう環境に毎日身を置いていると、文法とか全然やらなかったのに、3カ月でこれだけ変わったんだよね。
英語って勉強するものではなくて、使うものなんだなって実感したね。

パックン:知っている単語だけでなんとかするってことは大事だよね。

マックン:たとえば、納豆って何?と聞かれて、「え?発酵ってなんて言うんだっけ、大豆は?」とか考えているより、「私は納豆が好きだ」とか「嫌いだ」でもいいからとにかく何か言ってみる。
「あ、通じた!」と思った瞬間、そのフレーズは絶対に忘れないから。
驚いたのは、中2以来、あれほど嫌いで勉強しなかった英語なのに、案外単語は覚えていたんですよ。
知らずしらずのうちに身についていたんだよね。

パックン:そこは日本の教育のすごいところだよね。受験英語なんて無駄だっていう人もいるけど、決して無駄じゃないよね。日本人の単語力や文法力って、案外すごいんじゃない?

マックン:実はそうなんだよね。

パックン:だから、日本人はあと一押しで英語をしゃべれるようになるはずってこと!

日本人の英語力を邪魔しているのは完璧主義

天野:今年から高校では英語の授業を英語で教えることになったのですが、自分の英語力に自信がないという先生も大勢います。
そういう中で、どうやって先生方は授業をしたらいいんでしょう。

マックン:英会話学校で、ある時突然、オーストラリア人の先生が、「今日は、私は日本語しか話さない」と言ってこっちは英語オンリー、先生は日本語オンリーの授業をしたことがあるんですよ。
でも、その先生の日本語力って、「おはよう、ござい、ます」みたいな。
「なんだ、先生もこんな程度なんだ」って思ったら、間違えるのが怖くなくなっちゃった。
だから学校の先生も、生徒の前でいい恰好しようじゃなくて、生徒といっしょに勉強しよう!みたいな気持ちでいいんじゃないですかね。
もし間違って生徒にヤジを飛ばされたら「プロ野球選手だって三振するんだぞ!」と言い返したりね。

パックン:日本人の英語力をじゃましているのは、完璧主義の精神。
完璧じゃないと話してはいけないとか、恥ずかしいとか。
スポーツだって、最初から完璧な人なんていない。
テニスで変な球を飛ばしても、「アハハ、へたくそ!」って失敗も楽しみながら練習したらいい。
それと同じですよ。

マックン:僕ね、なんであんなに英語が嫌いだったんだろうと思い返したら、テストの穴埋め問題みたいに、これしか正解がないということをいっぱいやらされたからだと思うんだよね。
たとえば、日本人に“How are you?”って聞いたら十人中十人が”I’m fine thank you, and you?”って答えるでしょう?マスクしてて全然Fineじゃなくても。
そうじゃなくて、Not bad.でもいいし、Good !でも、Tired.でも、何通りでもあるってことを、中学校の最初の授業のときに教えてほしいと思うよね。
何を言ってもいいんだと思った瞬間から英語って楽しくなる。

パックン:学校の授業だったら、たとえば、家庭科室に行って、知っているものを全部英語で言ってみよう、というのもいいよね。
テーブルとか包丁とか鍋とか。
それができたら何か一つ形容詞を付けてみよう、大きい鍋とか、鋭い包丁とか。
その次は動詞を組み合わせてみよう、私は大きい鍋を持った、というように。
ゲームを組み合わせてもいいし、言葉って、なんとでもできるから、めちゃ楽しいはず。

マックン:やる気スイッチって、「通じた!」とか「できた!」とか、ちょっとしたきっかけで入ると思うんだよね。
僕だって、世界一英語嫌いと思っていたけど、好きになれたから。

パックン:もっと早くスイッチが入っていたらこんなダメ人間になってなかったかもね。

マックン:だれがダメ人間ですか!

取材日:2013年4月30日

パックン
パックン:パトリック・ハーラン(Patrick Harlan)

マックン
マックン:吉田 眞(よしだ まこと)

パックンマックン
1997年に結成した漫才コンビ
テレビ「ジャスト」(TBS)、「英語でしゃべらナイト」(NHK)、ラジオ「パックンマックン 海保知里 英語にThank you!」(TBSラジオ)など多数出演。全国の学校などでも精力的に講演し、笑う英語教育の普及活動に努めている。著書『使いこなせ!カタカナ英語』(小学館)など多数。

笑う英作文

新刊の紹介
『笑う英作文』(扶桑社)
マックンが、知っている英語を駆使して文章を作っていく様子がそのまま再現された、『笑う英作文』。「居酒屋」「鍋奉行」「リア充」などなど、いまどき日本語が、知っている単語と簡単な文の組み合わせだけで、ここまで表現できるんだ!と実感できる本。マックンのとんでも英語や和製英語に対するパックンの鋭いツッコミに、思わず笑えます。

編集後記

パックンマックンが漫才のように面白おかしく異文化体験や和製英語について話していて、聞いているだけでとにかく面白いし楽しいと感じた。
日本人の抱える英語コンプレックスについて、パックンマックンの二人だからこそ言えることがあるのだ。
二人の話を聞くと、海外の人や文化は遠い存在ではなく、すごく身近なことで、日々の生活の中に「学び」や「気づき」があふれているのに普段気づいていないだけなのかもしれないと気づかされる。
「英語教育」だとか「グローバル人材育成」だとか、難しく考えすぎてしまっているのかもしれない。
自分が楽しいと思える新しい事にどんどんチャレンジしていきたい!と私自身のやる気スイッチが押されたインタビューだった。

キンジロー編集長 天野智之

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