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創立125年の歴史を持つ郁文館夢学園。2003年に、ワタミ株式会社の創業者であり参議院議員でもある渡邉美樹氏が、理事長に就任。本格的に「グローバル教育」への取り組みをスタートさせた。その狙いは何かを聞いた。(以下敬称略)

指導者次第で、子どもたちの人生は良くも悪くもなる

天野:24歳で起業し、ワタミを年商約1600億円のグループ企業にまで成長させました。その後、教育の道に入られたのはなぜですか?

渡邉:僕はね、もともと教育がやりたかったんですよ。高校、大学時代に、学費を稼ぐためにアルバイトで家庭教師をしていたんですが、子どもたちがどんどん伸びていく姿を目の当たりにして、教育って面白いなと思ったのが最初。大学時代に養護施設でのボランティアに参加して、全く同じ境遇で育っているのに、ある子は勉強していい大学に進学し、ある子は悪い道に堕ちていく。この違いは何だろうとつきつめたら、それは担任の先生だった。指導者次第で子どもの人生は良くも悪くもなる。責任の重い、しかし何とやりがいのある仕事だろうと思ったんです。その頃からですね、教育の仕事をしたいと思ったのは。

天野:運送会社で働いて事業資金を貯め、起業されて、居酒屋「和民」を展開し始めましたね。

渡邉:そうです。当時の日記を見ると、正月に「30の店を出店し、上場して学校を作り、日本の教育を変える」と書いてあります。2000年に上場し、それから学校を作る準備をスタートしました。

夢に日付を入れ、夢に向かってやり抜くことで夢に近づける

天野:2003年に郁文館夢学園の理事長に就任されて夢がかなったわけですね。夢といえば、郁文館では「夢教育」が、教育の根幹となっているそうですね。

渡邉:夢は、人に大きな力を与えてくれます。夢があるからがんばれる。夢を追いかけ努力するプロセスの中で、人は成長できるのです。子どもたちには「夢手帳」を持たせ、自分のかなえたい夢、かなえる日付、行動予定、などを書かせ、一日の終わりには、夢のために何をしたか「夢日記」を書かせています。夢に日付を入れることが肝心です。かなったらいいな、と漠然と思うだけでは現実は動きません。いつまでに、という日付を入れて、日々やるべきことをやり抜くことで、夢に近づくことができるのです。

天野:渡邉さんもそうやっていろいろな夢を実現されてきましたね。事業家としては、2020年にはワタミを1兆円グループ企業に成長させるという夢を掲げておられます。政治家としての夢はどんなことですか?

渡邉:一番大きな夢は、日本を含め、アジアが今よりもっと連携し、互いの文化を理解し尊重し合いながらともに成長していける世の中の実現です。発展途上国の子どもたちが、きちんと食事ができ、勉強をすることができ、日本でも学ぶことができる。日本の子どもたちも、発展途上国から学ぶ。そうやって、相互の文化を認め合いながら成長していく。そんな姿を夢見ています。

天野:教育者としての夢はどんなことでしょうか。渡邉さんにとって、理想の教育とは?

渡邉:「教育は子どもの幸せのためだけにある」と私は考えています。では、子どもの幸せとは何か。世界の中で生きる力を持ち、自分の夢に向かって生きることです。郁文館夢学園は、常に「それは子どもたちにとって幸せか」をつきつめながら、新しい教育体系を作り上げてきましたし、これからもそうあり続けたいと思いますね。

10人に1人の高校生が1年間留学したら、日本は変わる

天野:郁文館夢学園では、ネイティブ教師による英語の授業や、全生徒を1年間留学させるというプログラムなど、グローバル教育にも特徴がありますね。

渡邉:日本では、高校生も大学生もどんどん内向き志向になって、留学生は減少の一途をたどっています。先進国で、留学生が減っている国というのは日本くらいです。私は、海外でもビジネスを展開していますが、子どもたちに世界を見せ、世界の中で通用する人間に育てなければと痛感しています。そのために、人間力、学力、グローバル力の3つの力を向上させる教育を郁文館夢学園では行っています。なかでも、私がこだわっているのが1年の留学プログラムです。なぜなら、留学によって、この3つがすべて得られると考えられるからです。

天野:渡邉さんの考える、グローバルな人材とはどんな人材でしょうか?

渡邉:日本という小さい世界ではなくて、世界で通用する、世界の企業や組織が求める人材ですね。もっと言えば、世界とか国境とか意識することなく、仕事ができる子を育てたい。それが私の考えるグローバル教育です。私は、高校生10人に1人は留学するべきだと考えています。そのために国がサポートするべきです。この国の高校生の10人に1人が1年間海外に留学したら、この国は変わりますよ。

渡邉美樹

渡邉美樹さん
学校法人郁文館夢学園理事長。参議院議員。
小学校5年生のときに父親が経営する会社を清算したことから「将来社長になる」と決意。明治大学卒業後、1984年にワタミを創業。2000年東証一部上場。「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」という理念のもと、外食・介護・宅食・農業・環境など独自の6次産業モデルを展開。公益財団法人School Aid Japan 代表理事としてカンボジア・ネパール・バングラデシュでの孤児院運営に携わっている。近著『子どもの夢をかなえる手帳術』(マガジンハウス)

編集後記

夢に日付を入れるということは簡単な事ではない。明確な目標を立ててそこに向かって努力する強い意志が無いとできないことだろう。事業で成功をおさめた渡邉さんだからこそ説得力のある言葉になる。 ビジネスの第一線で活躍してきた渡邉さんだからこそ、グローバルに活躍できる人材の育成を強く願っているに違いない。 私自身高校留学を経験し、早い段階で留学を経験して良かったと感じた。それは語学力だけでなく、異文化に適応する柔軟性や将来の可能性など様々な面でメリットを感じた。だからこそ渡邉さんのおっしゃる「高校生の10人に1人が1年間海外に留学したら、この国は変わる」という言葉は響いた。全員が留学する必要はないが、10人に1人が留学するだけでかなりの影響力があることは想像できる。 さらに多くの若者が海外にでるようになって欲しい。

Photo:戸井田夏子

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