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英語教師に聞く!「What is TESOL!?」

TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)とは、英語を母国語としない人たち向けの英語教授法のこと。
日本でも質の高い英語教師へのニーズが高まり、最近TESOLが注目されています。
キンジローでは、TESOLを履修した現職の英語教師の方に、履修のきっかけや履修後の変化などをお聞きしました。

シリーズ第1回目にご登場いただくのは、英語教諭、島﨑史子先生です。

体系的に英語を教える力を身につけたかった。

天野:教員になってからTESOLを履修しようと思ったきっかけは?

島﨑:もともと英語に対する興味関心が高く、また、大学で学んだ国際関係学を活かしながら、人に想いを伝える仕事がしたいと思い、教職課程を履修して高校の英語教員となりました。
ところが、英語が好きで英語教師になったのに、授業以外の仕事に追われてしまい、英語の知識を増やしたり、英語にどっぷり浸かる時間がなかなかできない。
自己の英語力低下に対する不安と、このままでいいのだろうかという疑問を感じるようになりました。
もっと勉強しないと体系的に教えられない。
英語学習者の視点を忘れないためにも、自分が学び続けないといけないと思ったのがきっかけです。

天野:シドニー大学に留学し、TESOLプログラム(Master of Education)を2010年3月〜2011年1月まで履修されましたが、留学にあたって必要な資格はありましたか?

島﨑:外国語(英語)の教員免許状を取得していることがまず一つ。
そのほかIELTS(英語力測定テスト)のスコア6.5以上もしくはTOEFL90点以上と、推薦書、志望動機を書いたエッセイ、大学の成績証明などの書類も必要でした。

天野:仕事を辞めて留学されたとか。不安はありませんでしたか?

島﨑:日本ではTESOLの認知度が低いので、きちんと評価してもらえるのか、帰国後仕事があるのかという心配はありました。
また、大学院の課程でしたので、授業についていけるのか、卒業できるかという不安もありました。

天野:TESOLプログラムはどのようなものでしたか。

島﨑:修士課程は、前期4科目、後期4科目、合計8科目を履修します。
内容は、第二言語習得論、教科指導法(メソドロジー)、グラマー&コンテクストなど、多岐に渡る科目から必要なものを選択することができます。
具体的に説明すると、「グラマー&コンテクスト」はグラマーを実生活と結びつけてどう教えるか、どのような教材研究を行うか、を考える実践的な授業です(詳しくはhttp://www.sydneyuni.jp/major/tesol.shtml)。
各科目とも、1時間の講義と1時間のチュートリアルの合計2時間で構成されています。
教科指導法を例に取ると、1時間の講義でたとえばseating(生徒の座り方によってモチベーションがどう変わるか)や授業の組み立て方(アクティビティの効果的な順番等)、教材の選び方等に関する理論を、研究論文を中心に一通り学びます。
教材研究の演習として、世界の教科書の比較し、国ごとの指導内容の特長を分析したりもしました。
その後、1時間のチュートリアルでは模擬授業や教育実習を行いました。

天野:クラスメイトは皆、教員を経験している人ですよね。
日本人と違っていること、逆に似ていると思うことはありましたか?

島﨑:似ている面が多かったですね。
国ごとに細かな状況は違いますが、抱えている問題や、生徒に対する気遣い、教材に対する真剣さは、万国共通だと思いました。

天野:生徒の年齢層や国籍は?

島﨑:20代半ばから50、60代の方もいました。
現地学校(語学学校や大学)の教員の方も、より高い専門スキルを学ぼうと学びに来ていました。
国籍でみると、アジアからの学生が多かったです。
中国は国が大きいこともあり、留学生の多くを占めていました。
韓国も、日本より小さい国ですが派遣制度や留学制度を使い、たくさんの教員が学びに来ていました。
オマーンや中東の国は、政府がTESOL履修を支援していて、政府派遣により毎年10人単位で来ているのだそうです。

TESOLで学んだことをそのまま授業に活かせる。

天野:帰国後、TESOLを履修する前と後では授業は変わりましたか?

島﨑:ひとつの成果としては、「自信が持てたこと」が大きいです。
実際に、英語力も伸びました。
現在働いている学校では、中学校1年生からオールイングリッシュで授業を行いますが、おかげで躊躇することなく全部英語で授業をすることができます。
教え方も変わりました。
以前は文法を一文一文細かく見て解説することが多く、学習テーマを深めたり、自己表現活動を効果的に組み込むことを苦手としていました。
しかし今は、テーマに合わせたディスカッションを行ったり、エッセーやクリエイティブライティングにも取り組むようになりました。
それにあたり、以前は授業で触れることのなかったパラグラフライティングやディスカッション指導も授業内で触れるようになりました。
特にライティングでは、アウトラインから始まり、読み返しては編集する、というTESOLで学んだ「プロセスライティング」を中学生の授業にも導入しています。
ピアリーディングやフィードバック、評価など教員の手間もひとしおですが、長期的に見れば「自主的な英語学習者の育成」に役立っているのではないかと思います。
また、実生活と学習内容をつなげた教材開発をするようになったのも、TESOLを学んだ成果だと思います。
たとえば手紙を書くという授業なら、ジャンルベースライティングとして、実際の手紙のフォーマットを見せたり教えたりし、演習として生徒が実際に書いたものを海外の学校に送る、というような生きた教材作成・教科活動を意識するようになりました。
教科書読解においても、以前は、「LESSON1で平和について読みました」、で終わりだったものが、英語で書かれた関連記事を幅広く扱い、インプットを増やす中で、平和についてのキャンペーンを考えたり、ポスター作成をしてプレゼンを行ったり等、生徒が主体となって自己表現する活動を組み込むようになりました。
以前の自分の授業を振り返ると、試験でいい点数を取るためのテクニック的な英語に力を注いでいたと思います。
今思うと、生徒とのインタラクションはほとんどなく、教員主体の授業をしていました。
今は、オールイングリッシュの授業になって、インタラクションが増え、生徒主体の授業にかなりシフトしたと思います。

天野:中学1年からオールイングリッシュの授業でも大丈夫ですか?生徒の反応は?

島﨑:個人的な意見ですが、オールイングリッシュの授業では、生徒の目が輝いているように思います。
生徒も活発に授業に参加し、楽しんでいるようです。
しかし、そのためには教員が意識的にしかけを作ることが必要です。
たとえばシンプルな英文を言う、生徒の学習レベルにあった語彙で端的に指示する、板書で補足するなど、視覚的にも聴覚的にも生徒目線にたったサポートが与えられるように、言葉ひとつの選択も綿密に考えなければいけません。
でも、その成果は生徒に伝わっていると思います。
これは生徒から聞いた感想ですが、最初はわからなくても、中1から英語のシャワーを浴びているうちに、語彙や表現力が蓄積されていき、次第に内容がわかるようになっていくのだそうです。
ですから、吸収力があるうちからオールイングリッシュで授業を行うこと自体は、いいと思います。
しかしながら、込み入った説明や文法の扱いなど、日本語が必要な場面も当然あると考えます。
たとえば、「仮定法過去(反実仮想)」といった文法用語は、日本語で教えなければ概念として理解しがたいでしょうし、参考書などで自主学習する際、用語を知らなければ困るでしょう。
英語は、自分で自学自習できないと力はつきませんから、このような配慮も必要だと考えます。
TESOLの講義でも、何でも英語で教えるのがいいわけではなく、第一言語でしっかり理解させるところはさせないと、あいまいなままでは運用力を高められないと学びました。

天野:最後にTESOLについて思うことや感想をお聞かせください。

島﨑:海外に出てスキルアップをしたいと思う英語教員は多いはずです。
私は、TESOL履修のために、仕事を辞めて留学をしましたが先のことを考えると大変不安でした。
TESOLは、実践的で授業に役立つ実践的な学問なので、不安があってもチャレンジする価値はあると思います。
もしも他国のように、休暇制度や派遣制度など、なんらかの形でバックアップがあれば、興味ある人たちがもっとチャレンジしやすくなるのではないでしょうか。

(2012年2月1日取材)

島﨑史子さん

島﨑史子さん
英語教諭。大学在学中に教師を目指し、故郷の英語教師になる。3年間公立高校で勤務した後に退職し、シドニー大大学院に進学。教育学部でTESOLを学んだのち、帰国後は東京都内の中学校にて勤務。

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