特集

今度こそ変わらなきゃ!本気の!英語改革

平成25年度から、高校の新学習指導要領が年次進行で実施される。
「授業は英語で行うことを基本とする」という記述が物議をかもしたが、すぐれた実践事例も出そろってきた。
今度こそ、「英語が使える日本人」を育てることができるのか。
新学習指導要領の作成に携わった文部科学省初等中等教育局視学官の太田光春氏と、留学による語学研修プログラムの企画・普及の仕事をされている、オーストラリアビクトリア州政府 教育企画推進官の眞田まこと氏にうかがった。

第2回はこちら »

先生も「一学習者」という認識を

天野:日本人は、間違うことを気にしすぎて、なかなか会話に加われないということをよく言われますが、このことについてどう思いますか?

眞田:留学時代、同じクラスにマシンガンのように話すドイツ人がいたのですが、よく聞くと文法はまるででたらめで、 I dosen't like〜とか言ってる。
でも、ちゃんと会話はなりたっている。
正しく話そうとして、時制がどうとか、三単元のsがどうとか考えているうちに、おいていかれくらいなら、間違っても、まず話し始めることが大事だと実感しました。
そういう経験を通じて、間違っていいんだ、と実感することも大事ではないでしょうか。

天野:自分がそういう経験をしていると、生徒に対しても、間違ってもいいんだ、という態度で接することができるようになりますよね。

太田:私も、教師だからといって、間違ってはいけないとは思いません。
私たちにとって英語は外国語です。
つまり、教師だって、英語に関しては一人の学習者なのです。
学習者なのだから、間違って当然です。
たとえ発音に自信がなくても、間違いのない英語を使う自信がなくても、一所懸命英語をコミュニケーションの手段として使おうとする姿を生徒に見せることが大事です。
こうした教師の姿が生徒に学ぶ勇気を与えます。
自分も先生のようになりたいという憧れをもつ子も出てくるでしょう。
教師にはそういう、生徒のロール・モデルになってほしいのです。
ネイティブの先生は音声モデルになりますが、英語学習という点ではロール・モデルにはなれないんです。

天野:私も、日本人の先生が教えることに意味があると思います。
ネイティブの先生は会話は教えられても、文法など、日本人の先生でなければ教えられないことがあります。

太田:日本人の先生は、外国語としての英語を学ぶ上で、日本人にとって何が難しいかということがわかっているので、生徒のつまづきに配慮した指導ができます。
ネイティブの先生は、理解できれば細かいことを気にしないので発音や文法が少々間違っていても直さない。
生徒のプライドを傷つけないように配慮しながら、音声形式や言語形式への気付きを意図的に促すことができるのは日本人の先生だけなんです。

文法は言語活動の中で指導することが大事

太田:ところで、眞田さんに聞きたいのですが、文法は大事だと思いますか?

眞田:大事だとは思いますが、それほどプライオリティは高くないのでは?文法の間違いを恐れてしゃべれないよりは、間違っても話したほうがいいと思います。

太田:新学習指導要領では、コミュニケーション重視ということが再三言われていますので、「文科省は、文法をないがしろにしている」と誤解されている節がある。
その点ははっきりしておきたいのですが、新学習指導要領では文法は大切だと言っています。
ただし、文法は、「コミュニケーションを支えるものであることを踏まえ、言語活動と効果的に関連付けて指導すること」「用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう配慮し、実際に活用できるように指導すること」としています。
つまり、知識として詰め込むのではなく言語活動を通して場面の中で教えてくださいとお願いしているんです。

眞田:文法って、実際の経験の中で学ぶと理屈抜きに理解できるんですよ。
以前、語学学校の教師が「I've been studying Japanese」と言ったことがあるんです。
そのとき、「あ、この先生は日本語を以前習い始めて今も勉強しているんだ」ということが瞬間的に理解できました。
それを現在完了進行形なんていう難しい日本語で説明するのではなく、感覚で理解して使えるようになればいいと思うんです。

太田:こんな話もあります。
ある高校の授業で、I love you.と言わないで、同じ内容を、仮定法を使って表現させる活動をさせたんです。
すると、生徒たちは「If I were your mobile phone, I could always be with you.」とか「If I were your mobile phone, I could always listen to your voice.」と表現したそうです。
この子たちは仮定法の形を絶対忘れないですよ。「仮定法の形はif+S+過去形,S+would, could, should, might +原型......」と説明するよりはるかに身につくのではないでしょうか。

(2011年8月31日取材)

太田光春さん

太田光春さん
文部科学省初等中等教育局視学官。日本福祉大学客員教授。 愛知県公立学校教員、愛知県総合教育センター研究指導主事、文部科学省教科調査官・国立教育政策研究所教育課程調査官を経て現職。新学習指導要領の作成にも携わった。 日課は、出勤前のフルート演奏30分、約1時間のウォーキング、腹筋・背筋100回、3時間英語を聞くこと。その他、年間約15000ページ、ペーパーバックスを読む。 テニス歴20年以上、スキー歴20年以上、剣道2段。メタボ改善奮闘中。

眞田まことさん

眞田まことさん
オーストラリアビクトリア州政府 教育企画推進官。 社会人10年目に、オーストラリアに留学。語学学校を経てカレッジを卒業。帰国後に留学センターを起業し、その後再渡豪してメルボルンの現地留学エージェントとしてビクトリア州の教育機関を中心に小学校から大学院まですべてのセクターの教育機関と働く。ビクトリア州の姉妹都市、愛知県で開催された愛知万博ではビクトリア州教育省の特別プロジェクトにも携わり、2006年の帰国後にビクトリア州政府東京オフィスで教育・訓練のPRを中心とした現職に就き、日本・韓国・台湾を担当。オーストラリアでつけた贅肉16.5キロの減量に成功、2年経った現在も体重を維持している。

«前の記事へ |  特集一覧  | 次の記事へ»

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます