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今度こそ変わらなきゃ!本気の!英語改革

平成25年度から、高校の新学習指導要領が年次進行で実施される。
「授業は英語で行うことを基本とする」という記述が物議をかもしたが、すぐれた実践事例も出そろってきた。
今度こそ、「英語が使える日本人」を育てることができるのか。
新学習指導要領の作成に携わった文部科学省初等中等教育局視学官の太田光春氏と、留学による語学研修プログラムの企画・普及の仕事をされている、オーストラリアビクトリア州政府 教育企画推進官の眞田まこと氏にうかがった。

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留学体験で得られるもの

天野:留学のことについて少しお聞きしたいのですが、眞田さんは、オーストラリアのビクトリア州政府で、留学プログラムの企画や提案をされていますね。

眞田:先生方にはオーストラリアの、TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)という、ノンネイティブの人に、英語で英語を教える英語教授法のプログラムをお薦めしています。オーストラリアはもともと移民の国ですから、長い歴史の中で培われたノンネイティブの移民がオーストラリアという英語圏で働き、生活していくために使う英語を身につけるための優れたプログラムなのです。
英語で英語を教えるということは、今までの日本語で英語を教えるのとは全く違う技術が必要とされるので、ぜひ日本の先生にも学んでほしいです。
現場の先生方だけでなく、先生を育成する側の先生もぜひ学んで、本当に英語が使えて教えられる先生の育成をしてほしい。
次の世代を育てるためにも大事なことだと思います。

天野:しかし、時間がない、予算がない、周囲の理解が得られない、などさまざまな問題もあるようですね。
生徒をおいて先生が留学するなど何ごとかという保護者の声もあるかもしれません。

眞田:周囲に何となく研修などに行きづらい雰囲気があるのならば、教育委員会や校長から、先生全員が、一年間に必ずこれだけの研修をしなさい、としてもいいのではないでしょうか。
自分だけが学校を空けるのではなく、みんなが順番に行くのだから、誰も出づらいと思わない、先生が当たり前に研修に行ける、そういう環境整備も必要だと思います。

太田:先生も学び続けるということは、確かに大切ですね。
ところで、海外に行って英語の研修をするうえで、勘違いしてほしくないと思うことは、ネイティブのような英語の使い手になりに行くのではないということです。
外国語としての英語を、コミュニケーションの手段として使えるようになるために行くことであって、先ほど眞田さんが言ったように、いろいろな国の人がいて、それぞれの国のなまりがありますから、英語が通じない、聞き取れないってことがあって当たり前なんです。
そこで劣等感を感じる必要はありません。そのことを実感するためにも、留学経験は貴重でしょうね。

教育とは学ぶ勇気と学び方を教えること

天野:最後に、先生へのメッセージをお願いできますか?

太田:教育は可能性を信じることを前提とした営みです。
最初から「うちの生徒たちはだめ」と決めつけるのでなく、「この子たちは絶対、必ず学べる」と信じて、ゴールを示し、そのゴールを共有して、子どもたちを伸ばしてほしい。同時に、教師も一学習者として、自分の可能性を信じ、自らの学ぶ後ろ姿を生徒たちに見せてほしい。
学校教育で一番大切なことは、自律した学習者を育てることです。
高校卒業の時点で完璧でなくてもいい。
卒業してからも、生涯にわたり英語を学び続ける子どもたちをつくればいい。
そのためには学ぶ勇気を与え、学び方を教えなければなりません。
もう一つ、生徒たちとの親和関係をつくることが重要です。
つまり、間違ったら叱られるのではなく、間違いが受け入れられ、よく頑張ってるねと言ってもらえる、そういう言語環境を教室に創ってほしいですね。

眞田:以前、イギリス人の友人が日本語の勉強を始めてまだ間がない頃に、「ほんのカタコトの日本語しかしゃべれないのに、日本人はみなすごく上手だとほめてくれる」と言っていました。
外国人がカタコトの日本語を話すだけで絶賛するのなら、生徒がカタコトでも英語をしゃべったら、ぜひ絶賛してあげましょうよと言いたいですね。
もう一つは、「誰のために教えるの?」ということをもう一度思い出してほしいということ。
教育委員会のためでも、校長のためでも、保護者のためでもない。
ましてや自分のためでもない。
子どもたちのためにやるんだということを思い出してほしい。
前例がないとか、時間がないとか、体裁が悪いとかではなく、生徒のためになるのなら何でもやる、という気持ちで、恐れずにチャレンジしてほしい。
プロの教師たるプライドを見せてほしいですね。

(2011年8月31日取材)

太田光春さん

太田光春さん
文部科学省初等中等教育局視学官。日本福祉大学客員教授。 愛知県公立学校教員、愛知県総合教育センター研究指導主事、文部科学省教科調査官・国立教育政策研究所教育課程調査官を経て現職。新学習指導要領の作成にも携わった。 日課は、出勤前のフルート演奏30分、約1時間のウォーキング、腹筋・背筋100回、3時間英語を聞くこと。その他、年間約15000ページ、ペーパーバックスを読む。 テニス歴20年以上、スキー歴20年以上、剣道2段。メタボ改善奮闘中。

眞田まことさん

眞田まことさん
オーストラリアビクトリア州政府 教育企画推進官。 社会人10年目に、オーストラリアに留学。語学学校を経てカレッジを卒業。帰国後に留学センターを起業し、その後再渡豪してメルボルンの現地留学エージェントとしてビクトリア州の教育機関を中心に小学校から大学院まですべてのセクターの教育機関と働く。ビクトリア州の姉妹都市、愛知県で開催された愛知万博ではビクトリア州教育省の特別プロジェクトにも携わり、2006年の帰国後にビクトリア州政府東京オフィスで教育・訓練のPRを中心とした現職に就き、日本・韓国・台湾を担当。オーストラリアでつけた贅肉16.5キロの減量に成功、2年経った現在も体重を維持している。

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