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日本の英語教育は何がいけないのか

難解な長文読解ができ、英米人よりも高度な単語力、文法力を身につけている人もいる日本人。
なのに英語が話せないのはなぜなのか?
英会話スクール「Gabaマンツーマン英会話」を設立し、ビジネス・ブレークスルー大学で独自の英語習得法を指導している青野仲達氏に、キンジロー編集長の天野智之がお聞きしました!

天野:「日本人は英語力がない」と色々なところで話題になっています。
キンジローのvol.6でも取り上げましたが日本人の語学力は57カ国中55位。
小学校で英語を必須化するとか、文科省が英語教育強化策を話し合う検討会を立ち上げるなどの動きもありますが、それが日本人の英語力アップにつながると思いますか?

自分の考えを伝えられることからすべてが始まる

青野:問題と、解決策が食い違っていると思いますね。
英語ができないことの何が問題なのかを突き詰めると、「仕事で英語を使えない」ということ。
では、仕事で英語ができるってどういうことか。
それは、グローバルな社会、つまり日本語が通じない環境でも、仕事でリーダーシップをとれるということ。
リーダーシップを取るとは、きちんと自分の考えを伝えることができ、それによって仕事や人を動かせるということなんです。
しかし、今の日本の英語教育の目的は、試験でいい点を取ることになっている。
だから、英語力が必要=TOEICで何点とるという話になってしまう。
そうではなく、仕事で英語を使える=リーダーシップを発揮できる=英語で自分の考えを伝えること。
そこから始めるべきです。

天野:しかし、英語力以前に、日本人は自分の考えを伝えるのが苦手という問題もありますよね。

青野:その通りです。
グローバル社会に必要な姿勢とは、【考える】×【伝える】=【変える】と考えています。
【変える】とは、今までにない形で成果を出すということで、先行きが不透明な今の時代に、ビジネスで最も必要とされる力です。
掛け算なので一つでもゼロがあると答えはゼロ。
たとえば、英会話スクールで会話=【伝える】ことだけ学んでも本当の英語力は身につかない。

天野:【考える】ことが抜け落ちては意味がないと。
学校教育の中で生徒に英語力を身につけさせるには、どうすればいいのでしょうか。

青野:教育って何だろうと考えると、生きて行くために必要な姿勢(マインドセット)と道具(フレームワーク)を授けることだと思うのです。
フレームワークとは、それを身につければ生きていけるという最低限の道具のこと。
何もかも教えて、全部覚えろというのではなく、これだけは教えるから、あとは自分で必要なものを手に入れて、充実させていってくださいと。
私の考えるフレームワークには、自分で考えて、それを人に伝えるための最低限の道具が入っています。

フレームワークのイラスト

青野氏が考える英語教育のフレームワーク。道具箱の中に、ロジカル、シンプル、ビビッドという3つのフォルダーがある。その中に、それぞれ、たとえばロジカルに話すための道具がいくつか、というように必要最低限の道具が入っている。

答がない前提で議論することが考える力を養う

天野:学習指導要領のしばりや入試対策という現実がある中で、学校現場の先生たちは、生徒たちに考えさせたり、考えを伝えさえる授業をするにはどうすればいいのでしょうか。

青野:社会人になってからハーバード・ビジネススクール(MBA)に留学したのですが、グローバル時代に合った授業スタイルだと思いました。
一番の特徴は、目的と手順が明確であることです。
目的は、ビジネスリーダーを養成すること。
手順は、レクチャーではなく、ケーススタディを徹底的に行う。
レクチャーとは答がある前提ですが、ケーススタディは答がない。
だから、あなたはどう思う?あなたならどうする?ということを繰り返し聞かれ、議論が進んでいく。
つまり、教育の中に【考える】ことが組み込まれているのです。
日本の教育は正反対です。
【考えない】ことが組み込まれている。答えがあることを教える。
ここは試験に出るぞということを教えられ、そのとおりに答えていい点を取る。
私も学生時代「考えなくていい」と言われたものです。
大学生に考えることなど期待されていない。
企業はまっ白な学生を採用したいのだと。 高度成長時代はそれでよかったのかもしれませんが、変化が激しく、未知のことに対して解決策を考えていかなければならない今のグローバル社会では、それでは生きていけない。

天野:なるほど。
でも、学校の授業を簡単に変えるのは難しいですよね。
ケーススタディという手法になじまない先生もおられると思います。
教え込むスタイルでずっときた先生方が、生徒から引き出すということができるかどうか。

青野:日々の学習に少し考える要素を入れることではないでしょうか。
折に触れ、あなたはどう思う?あなたならどうする?と聞くだけでも変わってくると思います。
ケーススタディについては、答がない、という前提に立つことを忘れないことではないでしょうか。
ケーススタディは、議論の末、最後にどこにいくのかわからない。
そういうものだと思わないといけない。
その中で、生徒が何をつかむか、何に気づくかです。
先生に求められるのは、生徒の気づきをいかにサポートできるかだと思います。
先生の役割って、オーケストラの指揮者だと思う。
音を出すのは先生でなくて生徒たち。
みんな違う音を出す。
でもそれがひとつのハーモニーになる。
みんな違う意見を言い合うけれど、その中で何か前進できたな、気づきがあったな、そういう場を作っていくのが先生の役割ではないかと思います。

(2010年12月2日取材)

青野仲達さん

青野仲達(あおのちゅうたつ)さん
ビジネス・ブレークスルー大学グローバル経営学科教授。ハーバード・ビジネススクール修了(MBA)。著書に『MBA 式英語習得法』(PHP 研究所)がある。

[Vol.08 2011春号掲載]

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