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「右足を出して左足を出すと歩ける」など、“あたりまえ”の動作を軽快な音楽にのせた「あたりまえ体操」が大ブレイクしているお笑いコンビCOWCOW。韓国やインドネシアでも活躍中のお二人に、海外に飛び出して感じたこと、気づいたことを聞いてみた!(photo:斉藤啓介)

嫌なこともネタにして ウケたらチャラ!それが芸人の面白いところ

天野:そもそも芸人を目指したのは?

多田:中・高が同じで、中3、高3のときはクラスも同じ。人生の節目で同じクラスになったのが運のつき。

善し:部活は別々でしたけど、唯一の共通項が「お笑い」で、文化祭では2人でコントをやったりして、結構ウケてたよね。

多田:好きが高じて、高3のときには吉本の養成所(大阪NSC)に入ろうと決めていました。普通なら相方も誘うと思うんですが、相方はバンドもやっていてファンクラブができるほど人気があったんで、なんか悔しいなと。それで、相方にはデザイン専門学校に行くとウソついて、一人で吉本に入るつもりだったんです。

善し:僕は絵を描くのが好きだったので、芸大を受験したんですが全部落ちて。で、「オレも同じデザイン専門学校に行くわ」と。またいっしょにつるんで遊べるわ、といろいろ妄想してたんですよ。

多田:それなのに入学してみたら学校が違うとなったら、さすがに悪いなと思って、本当のこと言ったんですよ。そしたら、相方が「それやったらオレもNSC行く!」と。

天野:芸人になってよかったことは?

多田:みんな言うんですけど、芸人って、嫌なことがあっても、それを舞台でネタにできるでしょう? それでお客さんに笑ってもろたら嫌なこともチャラになる。だから、自分は不幸やとか、コンプレックスで思い悩んでいるという方はぜひ、芸人になって、悩みを吹き飛ばしてほしいと思いますね(笑)。

「え?!」と思うこともネタにできると思うと何でも楽しめる

天野:あたりまえ体操で、韓国やインドネシアでも活躍されていますね。

多田:韓国のテレビ番組に初めて出演してあたりまえ体操をやらせてもらったら、韓国語のあたりまえ体操=「タヨナン チェジョ」が、検索ワードランキングが1位になった。

善し:野心があったわけでもなくて海外に行ったんですけど、日本だけやなくて、他の国でもウケるんや、ということは新鮮な驚きでしたね。

天野:言葉も文化も違うのに、海外で笑いを取るのは大変だったのでは? 韓国語は話せたんですか?

多田:全然。会話は全部カンペで(笑)。

善し:言葉も大変でしたが、お笑いなんで、タイミングとか、ニュアンスとか気を使いましたね。「なんでやねん」をどう表すかとかね。もともと韓国語にない言葉ですから。

多田:コントを考えるときでも、設定からして日本と韓国では違うんですよ。たとえば昼ごはんにコンビニで弁当を買うのは日本では当たり前だけど、韓国では違う。だから、韓国で単独ライブをやるときは、韓国の人にいちいち、このネタはウケるか聞いてからやりましたね。

天野:インドネシアにも進出されていますが、韓国とはまた違いますか?

多田:インドネシアの人は、本当にみなさんバラエティが好きというか、笑いに飢えているというか。向こうのコメディアンが何かちょっと言っただけで、全部爆笑なんですよ。僕ら、いじられても言葉がわからへんから、あたりまえ体操するだけ。なんか口惜しかったですね?。

善し:言葉ができたら、僕らも笑わせるのにと思うけど、しゃべられへんからね。

多田:覚えようと思っても難しくて、全然頭に入ってこないんですよ。だから、舞台に出たときの挨拶と、ありがとうの意味の「テリマカシ」だけは言えるようにして。

善し:テリマカシだけは、死ぬほど言いました。これ言うたら、とりあえず喜んでもらえる。

多田:言葉がわからないのを逆手にとって、それを笑いにしたりね。カンペ作って、お客さんに持たせたらそこでちょっと笑いが取れる。身振りで「次めくって」と言って、お客さんにめくってもらって、また笑いが起きる、みたいな。

天野:海外に溶け込む秘訣は?

多田:インドネシアって、トイレに紙がなかったり、ハンバーガー屋に行ってもチキンとごはんが出てきたり、日本人からしたら、「えー」と思うことの連続なんです。でもこれを不満に思うのではなくて、日本に帰ってネタにしよう、と切り替えると楽しい。インドネシアってツッコミどころ満載ですから。

善し:インドネシアの人たちは、悩みとかないんちゃうかと思うくらい明るいし、パワーがすごい。ホームレスでも何かしら仕事を見つけて働いている。それ何屋さんやねん、みたいなね。

多田: Uターンやさんとか。

善し: そうそう。車で走ってて、Uターンしたいなと思うことあるでしょう? そしたら誰かが、中央分離帯の切れ目に立って誘導してくれるんですよ。あー助かった、と思ったら、さっと車の窓から手を入れてきて、小銭をもらっていくという。それがUターン屋さん。

多田:踏切屋さんもいたな。遮断機のない踏切で交通整理をしてくれて、やっぱり窓から小銭をもらっていく。

善し: みんな、たくましいんですよ。

多田:戦後の日本みたいに貧しいのに、みんなスマホは持ってて、テレビもあって、僕らのことを知ってる。このギャップがスゴイね。

善し: はだしで子どもたちが外を歩いているような田舎でも、ぼくらがロケであたりまえ体操やってたら「イヤイヤラー(あたりまえ)」と言って、指さすんですよ。「え、知ってんねや!」とすごいびっくりした。

多田:日本から何千キロも離れたところに、僕らのことを知ってる人がいる。なんか不思議な気持ちですね。

日本でウケないから海外に行こうというのは違うと思う

天野:海外に行って得たことは?

善し:海外進出なんて考えたことがなかったのが、ひょんなところから海外に行くというチャンスができて、視野が広がりました。ネタづくりするときも、海外でウケるのかな、と考えるようになったしね。ただ、日本でまず一生懸命経験を積むことが大事で、日本でダメだったから海外に行こうというのは違うと思う。

多田:海外に行って一番思ったのは、ボクラなんと素晴らしい国に生まれたんやろうということ。2020年のオリンピックの開催地が東京に決まりましたけど、そりゃ東京に決まるやろ、日本しかないやろと思いますね。これだけ行き届いた国はほかにない。世界を知るために海外に行くのはいいことやけど、日本のよさを再認識する意味でもいいと思います。

天野:今後チャレンジしたいことは?

多田:あたりまえ体操を世界共通の体操にして、2020年のオリンピックでは、開会式の準備体操でやってもらいたいですね。まあ、ロンドンオリンピックで、ポール・マッカートニーがやったポジションを狙っているということでしょうか。

善し:ポール・マッカートニーは無理やろ。

多田:かえれ~!

多田
多田健二さん

善し
善しさん

COWCOW
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ。共に大阪NSC12期生。1993年結成。2001年に東京進出。和み芸人として人気の二人だが、2009年度S-1バトル8月チャンピオン(善しさん)、2012年R-1ぐらんぷり優勝(多田さん)など、それぞれピンでも活躍。人気の持ちネタは、お揃いのカツラとポロシャツ・紺ズボンでピアノの伴奏に乗せて体操のお兄さん風に踊る「あたりまえ体操」。

編集後記

お笑いの感覚は文化によって様々だ。今回COWCOWのお二人にお話しをお聞きして、まさか「お笑い」で世界に出ていくなんてと信じられないくらい驚いた。
面白おかしく話をしてくださったお二人だが、きっと世界に出るために様々な努力や苦労をしているのだろう。だからこそその厳しさもわかっていて、「日本でダメだったら海外へ行ってもダメだ。日本で経験をちゃんと積む」というしっかりとした考えを持っているのでだろう
「グローバル化」という言葉が一般的に使われるようになったが、グローバルにも様々な形があるのだと思う。
スポーツ選手やビジネスマンばかりがグローバルに活躍するのではなく、エンターテイメントや様々な分野でも今後グローバル化が進むのだろう。
COWCOWのお二人の更なるご活躍期待しております!

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