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【連載コラム】

【連載4】ディベートを使ったレッスンプラン

2014.06.05

理論とデモ、それから実践!

病欠の先生の代替で、初めて中学校での英語講師を務めたときでした。対象は中学3年生。ちょうど、教科書でディベートを扱うところでした。そこで、思い切って試してみたのが、ビジネス・パーソン向けのディベート研修内容です。 通常、社会人に教える場合には、まず理論編、そしてデモから実践へと入っていきます。そこで、言葉遣いのみを変えて、この手法を試してみることにしました。

●ディベートのレッスンプラン例
1. ディベートの歴史と形式
2. 模擬ディベート(価値論題)
3. ディベート実践(試合形式/政策論題)
実際の授業時間としては、2時限分を使いました。

1. 理論編:ディベートの歴史と形式
ここでは、そもそもディベートとは何か、という定義から入り、ヨーロッパからアメリカへ至る伝統と歴史を伝えました。
まずは、ディベートにまつわる、さまざまなエピソードを話しました。たとえば、グローバルに成功している企業――当時はサムスン電子など――を例に取り、なぜ日本の並み居る家電メーカーを抜いてグローバル市場で価値を収めているのか? それを考えるときの最も根本にあるのがロジカル・シンキングだ、と伝えます。
ではロジカルって何だろう?その一番の基本が「三角ロジック」で説明できるんだよ、と伝えます。
このあたりまでは、生徒たちはキツネにつままれたような顔で、付いて来れない感じがありましたが、そのまま続けます。実は英語以前の世界の共通語があるんだけれど、それは何だと思う?と尋ねます。
「???」というのが生徒たちの共通の反応です。
それは、「ロジック」なんだよ!このロジックを日本人はあまり鍛えてこなかったために、本来すごく力があるにもかかわらず、グローバルな舞台では本領を発揮できないでいるんだね。
ロジックというのは、この三角形で説明することができるんだ。
まず、一つ目の三角形の3つの角に、P・D・Wとアルファベットを書き入れます。

つぎに、このPって何だと思う?と問いかけます。みな、「???」の状態です。
この問いかけは、生徒を煙に巻くためのものでも焦らすためのものでもなく、生徒に考えさせるための問いかけです。この点は、ビジネス・パーソンが相手でも同様です。単純な問いほど、何とか答えをみつけようとします。このあたりは、中学校3年生の場合、十分に効果的であると感じました。
そして、それぞれを説明します。
P=Proposition(主張・命題)※ほかにも、C=Claimという場合もあると伝えます。
D=Data(データ・証拠)
W=Warrant(論拠・推論)※ほかにもR=Reasoningという場合があることも伝えます。
実は、どれも中学単語の範疇を超えており、一見難解なのですが、まずはそれぞれの単語としての意味と役割を説明します。
そして、三角ロジックの最終は、熱帯雨林を探検している靴屋さんの例えで、完結します。
ここで、命題・証拠・論拠の事例をいくつか、わかりやすく説明し、この三角形の証拠と論拠を崩し合ってどちらが正しいかを競うのがディベートなのだ、と結論づけます。
加えて、ディベートの歴史は古代ギリシャの昔にまでさかのぼること、また、プラトンやアリストテレスの時代にほぼ完成していたことなどを伝えます。グローバルな仕事というものは、基本的に、このロジックとディベートの上に成り立っているというふうに伝えることで、その大切さを理解してもらうことができます。
そして、歴史の次には、基本的なディベートの形式を説明します。

2. 模擬ディベート(価値論題)
理論編のあとは、模擬ディベートです。最初は難しそうに感じても、この模擬ディベートで楽しさを味わえば、生徒たちはディベートへの興味とノリを作り出せます。
模擬ディベートでは、好きか嫌いか、などのいわゆる「価値論題」を選びます。これだと、誰でも気軽に参加でき、勝敗という切迫感も弱くなるからです。
たとえば「うどんが好きか、ラーメンが好きか」「犬が好きか、猫が好きか」といった、とても身近で、かつ誰でも参加できるテーマが最適です。これに三角形を示して、きちんと「D:証拠」「W:論拠」を示しながら主張することを練習させます。ここでは、簡単なワーキング・シート――肯定・否定を大きく2欄に分けた用紙を用意するとよいでしょう。

3. ディベート実践(試合形式/政策論題)
模擬ディベートのあとは、実際に試合をします。試合のルールを説明し、クラスを班や4〜6名のグループに分けます。
論題として、今度は「政策論題」、つまり「〜すべきかいなか」という大きな社会的テーマを取り上げます。私が受け持った中学3年生の授業では、震災の直後だったこともあり、「日本は脱原発すべきかいなか?」?Resolved that "Japan should de-nuke."としました。
結果は、大盛り上り!論理的思考力が発達する反抗期の中学生だからこそ、純粋な議論ができたと考えています。
当初は、ビジネス・パーソン向けの内容ではつまらないのではないか、退屈するのではないか、理解できないのではないか、という懸念を持っていました。しかし、それをよそに、ディベートの何たるかをしっかりとつかんでもらうことができました。
さて、最後にもう一つ、上のようなレッスンを英語でやるか日本語でやるか、という問題があります。
このときは日本語で指導をしました。英語は論題だけでしたが、比較的しゃべれるクラスでは、英語もしくはバイリンガル形式のディベートが可能です。
バイリンガルのディベートは、立論を英語、質疑応答を日本語、反駁1を英語、最後の反駁2を英語で行うというものです。この形式であれば、英語力に応じて、負担なく参加させることが可能となります。
今回は、ディベートを取り上げました。今後は、発音指導や語彙指導など、ほかの学習分野での具体的なレッスンプランの基本をご紹介していきたいと思います。

記事提供:先生のための語学教材活用ルーム「Lesson Library
執筆:竹村和浩さん TLL言語研究所 代表

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