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生徒の「発言力」を育てる指導の重要性

TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)とは、英語を母国語としない人たち向けの英語教授法のこと。
日本でも質の高い英語教師へのニーズが高まり、最近TESOLが注目されています。
キンジローでは、TESOLを履修した現職の英語教師の方に、履修のきっかけや履修後の変化などをお聞きしました。

シリーズ第5回目にご登場いただくのは、錦城高等学校の英語教諭、大崎昭先生です。

憧れの先生との出会いが英語教員への道へ

天野:英語教師を目指されたきっかけは何でしょうか?

大崎:現在自分が勤めているここ錦城高等学校は私の母校ですが、この高校で尊敬に値する英語の先生と出会い、将来先生になれるのであれば、絶対に教科は英語と決めていました。

天野:ずっと英語教員を目指されていたのですね。

大崎:先生になりたいということは、当時は選択肢の一つであり、大学では経済学部に入学し、電機メーカーに就職しました。
しかし、好きな英語を勉強していく中で、素晴らしい英語教師と出会い、「教えることは学ぶこと」という言葉に惹きつけられ、自分の仕事は英語教師以外にはないと思い、メーカーを1年で辞めて、再度大学に戻り教員免許を取得して、非常勤講師7年経験して、母校である錦城高校に専任で勤めることとなりました。

自分自身の授業の改革

天野:TESOLを取得しようと思ったきっかけは何でしょうか?

大崎:「自分が習ったように教える」ことをしていては、教授法として進歩がないと思い、毎年1つだけ、自分の授業に変化を加えていました。
しかし、長年教えていると、行き詰まりを感じていました。
自分の授業を海外の英語教師たちと肩を並べ、客観的に評価してみたい、新しいアイディアを得るためにも海外でTESOLを学ぼうと決意しました。

天野:もともと留学のご経験などはあったのでしょうか?

大崎:生徒の引率でこれまでにアメリカ、イギリス、オーストラリアに行く機会は何度かありましたが、自分自身の自己啓発としての留学というのは初めての経験でした。
大学では他の国の学生と、寮で共同生活をして楽しく過ごしました。

天野:オーストラリアのウーロンゴン大学のTESOL修士を学ばれたとのことですが、この大学を選んだ理由は何でしょうか?

大崎:ウーロンゴン大学のTESOLは1年で取得できるということと、通信講座もあるということなので、ウーロンゴンに決めました。
私は4月から1年休職してTESOLを学びに行きましたが、オーストラリアは1月から新学期のため、マスターコースへは春学期の7月から入学しました。
修士の科目以外にも論文の書き方やリサーチの仕方などを学べるワークショップが数多くあり、アサイメントについて個別に相談する機会もあり、大変助かりました。
本来休暇中の11月から1月も、夏コースを受講し、卒業に必要な8科目中6科目を終えることが出来ました。
ただ、私の場合、4月には復職しなければならなかったため、残りの2科目は、働きながらオンラインの通信で修了する予定です。

「発言力」の重要性

天野:TESOLではどのようなことを学ばれましたか?

大崎:発音や、オンライン学習の教材開発、第二言語習得などを履修しました。
また、日本で以前に自分が作成した入試問題も様々な文献と比較し、評価することを行いました。

天野:具体的な授業内容や様子などもお教えいただけますでしょうか?

大崎:例えば、Youtubeの動画を活用して、運動しながら発音することなども行います。
ストレッチしながら発声したり、強く発音する部分はボクシングのパンチと同時に発声するなど、いかに発音を楽しく学ばせるかなどを教わりました。
英語学習は体育実技と似ていることも実感しました。
ウーロンゴン大学のTESOLコースは様々な国の人たちが学んでいます。
現地のオーストラリア人の英語教員も同じクラスで学んでいるため、多様な文化に囲まれています。
第二言語として、初めて英語を学ぶ移民の子供たちには、まず何から教えるべきなのか、教材はどのようなものを使うか、などのディスカッションも行いました。

天野:違う国から来ている生徒が多いとのことですが、国ごとの特徴や、何か印象に残っていることはありますか?

大崎:外国語としての英語教育に関しては、国ごとにそんなに大きく変わるというイメージはないですが、"Correctness vs. Fluency"ということを考えさせられました。
とにかく日本人以外の生徒はよく発言します。
ディスカッションの場では、発音や文法が正しくなくても、自分の意見を主張します。
日本人は正しい文法を組み立てることにばかりに神経がいってしまい、内容がお粗末であったりします。
正しい文法を教えることは大事ですが、多少の文法や発音のミスは気にせず、自分の意見をアウトプットできる生徒を育てることの重要性に気づかされました。

自立学習者を育てる

天野:TESOL留学をされて、海外と日本の教育の違いについて何か学んだことなどありますか?

大崎:オーストラリアでは、スマートボードと呼ばれる電子黒板が当たり前です。
ほとんどの学校でスマートボードが導入されています。
ITを活用した授業が進んでいます。
日本ではまだ黒板を使っていると教えたら、オーストラリアの人たちは凄く驚いていました。
なぜならそのスマートボードは日本製だったのです。
日本製のスマートボードがオーストラリアでこんなに普及しているのに、日本ではまだ導入が進んでいないという状況になっているのです。
インターネットに接続したスマートボードを利用することにより、'Authentic'な英語に触れさせる機会が増え、多くの生徒が英語を楽しく学べるようになればよいと思います。
また、日本人の勤勉さは海外でもよく知られており、遅くまで図書館に残っている日本人をよく目にしました。
しかし、海外で求められている勉強スタイルは少し違う気がします。
日本では、相手の求める答え、知識を埋めていくことが求められる傾向がありますが、海外では、いかに自分の意見を、様々な文献、インタビューを通して、説得力ある文章を書くか、面白いアイディアをクラスで発表できるかということに重きが置かれます。
そのため、リサーチ、文献検索などに多くの時間を費やし、能動的に楽しく勉強しているように思えます。
図書館も夜遅くまで開放されていて、自立学習者が多く、大変良い刺激を受けました。

天野:自立学習者を増やす為に授業で実践されていることなどはありますか?

大崎:やはり自分の言葉でアウトプットすることを重視しています。
英文を読んで、サマライズ(要約)したものを書く。
また、その英文の感想を書く。
ということを行っています。
決められたものを書くのではなく、自分の気持ちを自分の言葉でアウトプットするという活動のほうが、生徒は楽しそうです。

天野:今後の夢や目標は何ですか?

大崎:とにかく生徒を楽しませたい。
感情表現の手段として言葉があるわけですから、受験の為だけでなく、「興味」を持って、国際語としての英語を自ら学ぶ生徒を育てたい。
そのために、"correctness"ばかりに気を配って授業を行うのではなく、"fluency"という点にもっと力を注いで授業を行いたいと思います。

(2012年5月1日取材)

大崎昭さん

大崎昭さん
錦城高等学校英語教諭。
大学卒業後に電機メーカーに就職するが、教員免許を取得するために退職。大学で教員免許を取得後、7年間の非常勤を経て、自身の母校でもある錦城高等学校の英語教員となる。2011年度に休職をして、オーストラリアのウーロンゴン大学へTESOL留学を経験。

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