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“国際共通語”としての「英語ができる日本人」を育成する!

文部科学省が、「『英語ができる日本人』の育成のための行動計画」を発表してはや十年。留学者数は減少し、大学の国際化も思うように進んでいない。日本人の英語力は向上したのだろうか。

中学校教師が絶対してはいけないこと。

天野:小学校の外国語活動がスタートしていますが、このことをどう評価されますか?

吉田:少なくとも実施前に心配していたほど現場は混乱していないようです。
Benesseの調査からも、現場の先生たちはALT任せでなく、かなり積極的に外国語活動に取り組んでおられるようです。
課題は小中高の連携です。
新しい教科書の中では、小学校の外国語活動で学ぶ表現や内容を中学校の教科書にも載せるなど、教材面での連携は見られますが、現場の授業はどうでしょうか。
少なくとも、小中高等学校の先生方が、互いに小学校、中学校ではどんな授業をやっているのかその内容を把握する努力をする必要があるでしょう。
一番いけないのは、中学校の先生が、「小学校の外国語活動など一種の遊びだ」と、無視してしまうことです。
これでは子ども達は何をやってきたのかという気持ちになる。英語嫌いにもつながってしまいます。

民間の協力なくして教育は良くならない。

天野:小学校の先生はそもそも英語の指導が専門ではありませんから、どう教えていいかわからないという問題もあると思います。
教員免許がなくても、英語が指導できる優秀な人材を学校で活用できないものでしょうか。

吉田:そのために、私も理事を務めている、NPO法人小学校英語指導者認定協議会が、J-SHINEという小学校英語指導者認定制度を作りました。
有資格者は全国に数万人います。
しかし、実際に学校現場で採用されている先生はごくわずか。
しかも待遇はボランティアです。
教育をよくするためには民間の協力は不可欠です。
学校現場ももう少し柔軟に、外部人材を活用してくれればいいのですが。

天野:英語教員の英語力向上については、TESOLのようなしっかりした研修が必要だと思いますがなかなか広がっていないように思います。
教員免許更新の講習に取り入れるなどはできないのでしょうか。

吉田:上智大学では、TESOLの教授が3日間、TESOLプログラムを凝縮した形の講習をしています。
もちろんオールイングリッシュの授業です。
大変やる気のある先生方が受講され、希望者も多い。
しかし、これと同じことを他の大学でもやれるかと言えばそれは難しい。
指導できる教員の確保も大変ですし、オールイングリッシュの授業となると、英語に自信のある先生しか受講できない。
教員の英語力を向上させるという目的であれば、別立てで研修制度を整える必要があるでしょう。
国のほうで、教員を対象に9カ月間のアメリカ研修派遣の予算を確保していて、今年も100名くらいが派遣されると思いますが、こういった制度はいいことですし継続してほしいと思います。

大学も真剣にグローバル化に取り組むべき。

天野:東大が秋入学の実施を発表して話題になっていますが、このことをどう評価されますか?

吉田:上智大学の国際教養学部では以前から秋入学を実施しています。
秋入学によって発生するギャップイヤー(ギャップターム)を利用して、インターンシップやボランティア、留学など、普段できない体験をすることは大変いいのではないでしょうか。
大学側でも、入学前単位認定制度を設けるなどして、それらの体験を評価すれば、ギャップイヤーの体験が無駄にならない。
また、採用する企業にとっても、卒業が秋になれば、4月の入社までの期間を研修期間とするとか、採用活動そのものをその期間にもってくればいい。
そうすれば、大学生も就職活動に煩わされず、学業に専念することができます。
いろいろとメリットがあるのではないでしょうか。

天野:世界の大学のランキングでは、日本の大学の評価が低いことはつとに知られています。
2011年10月6日に発表されたイギリス教育誌タイムズ・ハイアー・エデュケーションの「World University Rankings 2011-2012」では、1位がカリフォルニア工科大学、2位がハーバード大学とスタンフォード大学。東京大学は30位という結果になっています。

吉田:グローバル化という面では確かに日本の大学は遅れています。
しかし、研究内容など学問的にみると日本の大学は世界でもトップレベルにあります。
問題は、それをどうやって世界に発信していくか。
日本はその点が弱い。そのためにも、グローバル30で、海外から優秀な留学生を集めることに意味があるのですが、授業は日本語でしかできないとなると、だれも日本の大学には来ません。
日本の大学も、真剣にグローバル化を図っていく必要がある。
これは大変重要な問題だと思います。

(2012年3月28日取材)

吉田研作さん

吉田研作さん
上智大学外国語学部教授、外国語学部長、上智大学国際言語情報研究所所長。
専門は、応用言語学。最近は、主に、文部科学省が提唱している「英語が使える日本人」の育成のためのさまざまなプロジェクトに関与し、特に日韓中国の高校生の英語力比較および、教師の教え方の比較研究、さらに、国内における文科省指定のSuper English Language High School と普通校の間の英語教育の違いなどについて研究している。外国語能力の向上に関する検討会座長。J-SHINE理事・認定委員長。

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